投稿日: Apr 13, 2015 12:24:26 AM
同じサービスを提供するのでもBtoBとBtoCではモデルが全く異なることが多い。それぞれがビジネスを伸ばしていくと、どこかで競合することも起こってくる。昔のオフィスのコピー機のような電子写真にプリンタはメンテナンスが必要な個所が多かったので、サービスマンが巡回する体制を作らないとビジネスはできず、それらのコストをプリント1枚ごとにチャージするモデルを作ることで、使用量の大小にかかわらず一定の料金体系を提示することができた。
それに上乗せする形でマシンを導入したコピーサービスが生まれ、消費者にもコピー1枚10円という値ごろ感は長らく続いたように思う。コピーをする業者というのもそれなりの業界を形成した。これらは、コピーサービスを提供する側にも都合の良い安定した料金体系であったのだろうが、パソコンのプリンタの時代になって、サービスマンの往来が不要になるような、メンテ部分である感光ドラムとトナーユニットが「カートリッジ式」になった小型電子写真プリンタができて、一世を風靡するようになった。
このカートリッジは素人でも交換可能ではあって、ビジネスモデルは全く変わってしまったのだが、カートリッジの価格は高く、結局コピー1枚10円を踏襲していたように記憶する。サービスマンが不要でカートリッジの一方通行の流通というようにモデルが変わったにもかかわらず、価格面の調整で大量コピーするコピー業者も守られたのかもしれない。
しかし「カートリッジ式」によって小型プリンタを分散的に置いて利用することが広がれば、いずれどこかで大量集中処理とは競合するようになる。
さらにインクジェットプリンタの時代になるとプリンタ本体のメカ部分はもっとシンプルになり、本体の価格は最低にしてインクカートリッジでビジネスするようになった。これも電子写真の時代の踏襲で、1枚当たりのコストは変化しないものだった。つまりビジネスモデルや技術は変化しても、利用者のコストはあまり変わらないようにコントロールされていたのだろう。
不思議なことに、こういう価格コントロールの裏をかいて、もっと単価の安いサービスを提供して割り込もうとしたところが大きく伸びることはなかった。ヨーロッパでは京セラのドラム交換不要とか、アジアではインクジェットのインクをボトル供給するものが広がったが、日本ではそれほどの勢力にはなっていない。
しかし近い将来に、電子写真でもインクジェットでも価格コントロールでビジネス側の秩序をたもたせようとすることには限界がきて、プリント価格の液状化というようなことが起こることは考えられる。今コンビニのカラーコピーは50円くらいするが、インクジェットならカラーコピー10円にはできる。B6とかA5ならばその何分の1かの単価になる。これはBookOnDemandを期待している人には朗報だろうが、そういうレベルになるとコピーというサービス業はおそらく成り立たなくなるのだろう。このことはプロダクションプリントにもあてはまり、大きなジレンマとして普及を遅らせている気がする。
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