投稿日: Jun 23, 2015 12:27:7 AM
大手印刷会社がCGやVRの技術開発に力を入れていた時代があった。これらの基礎技術はアメリカのものだが、応用面は非常に幅が広く、印刷がありとあらゆる分野で使われたように、ヴィジュアライゼーションを容易にする技術にはものすごく大きな可能性が感じられた時代であった。実際にそのとうりに進展してきたのだが、そのうち印刷会社が優位な分野はどのくらいあるのだろうか?
技術開発の時代に於いては、印刷会社は展示・イベントの事業もしていたので、3DCGやVRのデモをするとよい局面がわかっており、国際的にみても素晴らしい作品を作っていた。それが次第にゲーム機でもできるようになったり、映画が特撮のかわりにCGを使うことが当たり前になって、テレビのニュース報道番組でもCGで説明するとか、いろんな分野が自分で技術をもつようになった。技術はそのようにコモディティ化していくものである。
コモディティ化した市場に対して、開発の先行者の優位点はどこに残るのであろうか? コモディティ化したところは単価が安い仕事が沢山あるようになるので、大手印刷会社のようなところには向かない仕事になってしまう。アニメと同じ様に中国に外注ということになりかねない。それでも最初のプロデュースとかディレクションの部分で利益が上げられるようならばよいのだが、技術開発の人たちがそのように転進することも難しいのだろう。
技術を誇ってビジネスをするには、量産品を捨てて一点製作の世界に行くしかないだろう。よく町の中小企業の鉄工所のようなところが、そこでしかできない加工を請け負っている番組がテレビであるが、あれに似た世界である。私の学生時代には新幹線の延長が盛んに行われていて、そういう車両関係のアルバイトによく行ったものだが、内装は量産でも肝心な部分は当時は手作りの部分はかなりあった。今なら航空機とか宇宙開発になるのかもしれない。
メディア・コンテンツ作りにおいても、一品製作の特殊な分野はあり、やはり近年はCAD・CGの会社が育ったが、いつも仕事が潤沢にあるわけではないので、企業としてはあまり伸びられないようだ。会社を大きくするには、社内の技術者に依存しているようではだめで、いろいろなところとアライアンスを組むなどマネジメント面で強くならなければならないのだろう。それができないでモノつくり賛美をしているようでは、あのブドウは酸いに違いないというキツネのようなものだ。
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