投稿日: Jun 20, 2011 11:34:32 PM
売れる電子書籍にしたい方へ
編集関連業務の過去からの分業体制を当然と考えてしまうと前に進めないことを、記事『視点を変えると出版は変わる』で書いた。デジタルでは紙媒体の編集・制作のフローをリセットして考え直さなければ、効率が上がらないだけでなく、デジタルの上に新たなビジネスが拓けないからである。これは欧米では20年前のDTP導入の頃に始まったことで、欧米の出版社は自分でコンテンツを管理して校正までは行えるようになり、今日のKindleにつながる。まだ日本の出版社は紙媒体の分業体制の呪縛から解き放たれていない。それで日本の出版の閉塞感は世界一のレベルになってしまったので、何としても視点を変えてなければならない。
日本が変わらない理由は出版社を従来のままにしておこうとする力が働いているからだ。出版社から仕事をもらっている印刷会社や制作会社の恐れは、出版社の内製化で仕事がなくなるかもしれないことだろう。しかし出版社の業績が下がれば、仕事をもらっている側にとっても元も子もない。制作会社の生き延びる道としては、これから成長する出版者や企業のコンテンツホルダに利するようなサービスをすることである。前記事では情報はナマものであるので、コンテンツホルダの手元にある情報の更新が常時出来るようにする必要があることを書いた。
それだけでは制作会社の仕事が減ると思う方がいるが、実はコンテンツを活用するのに必要な情報は圧倒的に足りないのである。YouTubeに動画をアップルする際には検索用のタグを適切に入れなければならないように、電子書籍も見つけてもらうとか、クチコミを利用したいなら、図書館の書誌情報以上の多くの情報を持たせなければならない。記事『避けて通れないコンテンツ管理』では、流通の面から検討したことがあって、ハイライトシーンや演者の写真も貼り付けて使えるものを提供するとか、従来商業印刷物として別工程であった広告コピーやポスターなども、コンテンツのデータベースに関連付けて整備すべきことがある。
しかしコンテンツホルダがこれらのことをすべて自分で考えて行うことは不可能で、外部に相談相手や作業をしてくれるところが必要になる。制作側も印刷物の場合は成果物をつくる作業の内訳として見積もっていた仕事を、それぞれ独立した仕事として、そのような仕事のノウハウを組み合わせてコンテンツホルダと一緒に新たなビジネスを起こしていく努力をしなければならない。出版社の電子書籍が自炊まがいの作業で終わってしまうのでは作家に申し訳ないのではないか。紙の出版であっても最初の段階では1冊ごとに本のプロモーションを考えて献本や書評依頼をしていたのに相当することが、ネット上の電子書籍流通でも半自動的にできるように、編集側と制作側は協業しなければ閉塞状態を突破できないだろう。
関連セミナー コンテンツのデジタル化でビジネス活性化 2011年7月1日(金)