投稿日: Sep 22, 2010 11:35:58 PM
Webと電子雑誌は何が違うかと思う方へ
最近、似たタイトルの記事(Webは 目的か? 手段か?)を書いたことがあるが、メディアというのは本来は媒介物なので「手段」に過ぎないにもかかわらず、そのメディアそのものも愛好される場合がある。単行本は装丁やデザインが気に入ったからとっておくことはあまりないだろうが、雑誌に関しては中の記事とは別に、雑誌の雰囲気が好きで捨てられないことはあるのではないか。独身時代は雑誌のバックナンバーを揃えて眺めるのが好きだったので、本棚10本くらいをそれにあてがっていたが、結婚で処分してしまった。もしその時に「自炊」という方法があったとしても、そうしたかどうかわからない。雑誌の記事の必要な部分だけスクラップしたとしても、それはもう雑誌のイメージはどこかに吹き飛んでしまう。今でも処分した雑誌のノスタルジーはあるのだが、それを何かの方法で再現できるものなのかどうかはわからない。
今年になってiPadが契機になって、いろんなタイプの電子雑誌が試みられるようになって、それぞれは独自なコンセプトを掲げているが、では何らかの電子雑誌のスタイルが出てくるかどうかは疑問である。まさに「雑誌」というが如く、何でもありなんだろう。では電子雑誌というジャンルはどうなのか? 今のところ紙の雑誌の電子版ということで、なんとなく電子雑誌であると認識しているが、iPadのようなデバイスではマルチメディアやアプリが渾然と組み合わせられるので、何を持って電子雑誌を定義するのか。多くの人はWebと区別する点として、ページ単位に編集されていて、マルチメディアやアプリはページの中に配置されている形が電子雑誌ではないかと考えている。これもスタイル上の問題で、Webでもページの大きさを固定にすると区別はし難くなる。
従来eBookと呼ばれる電子書籍や電子雑誌の総称は、ページ単位であってページめくりをして読むものであった。つまり内容はシーケンシャルに編集されているものを指す。これはWebが自由にリンク先ページに飛んでいくものであって、メディアを作った人の意図と読む人の意識をあわせにくいというフラストレーションがあったことの反動かもしれない。つまり読む側からは「何がいいたいサイトかわからない」、提供する側からすると「ページ誘導がし難い」ということがある。言い方を変えると、シーケンシャルに編集することでナビゲーション的な要素を強めた媒体としてeBookはあると思う。これはプロダクトアウトな発想で、pushであるから、カタログとか販促的な雑誌メディアの置き換えになるだろう。その意味で販促手段としての電子雑誌はありえる。
しかし本来の雑誌というのは、シーケンシャルに読むものではなく、興味のあるところだけつまんで読むので、Webに近い。それでも雑誌にある価値があるのは、雑誌は今さしあたって不要な内容でも無視できないものを包含している点で、それは出版側(主として編集長)の一種の世界観のようなものに裏打ちされているからである。つまり編集長の意識を紙の上で索引のように可視化したもの(一部)と言ってもいいかもしれない。だからネットの無かった時代には雑誌がいろいろな分野ごとのポータルであったし、その世界に群がる人相手に広告も出ていた。電子雑誌に置き換えていえば、Webを越えて世界観の可視化やポータル化をするようなことが出来れば、それ自身が目的化される媒体になりえる。まだそこまでの編集がされた電子雑誌は見たことはないのだが…。