投稿日: Oct 10, 2011 3:18:47 AM
パッケージソフトは滅んだと思う方へ
Steve Jobs が亡くなってから、ネットにはこの30年ほどを振り返るような書き込みが増えた。語れば尽きないほど、この30年間には大きな変化があって、その間どれだけの会社が出現しては消えていったことだろうか。ホストコンピュータメーカーは元もとの顧客である官公庁や大企業などのニッチな市場に戻って、コンテンツビジネスや情報家電に新たな足場を築くことはなかった。いやまだ指向は残っているので「無かった」というのは言い過ぎかもしれないが、あまり期待できそうにはない。それはシリコンバレーに象徴されるこの30年間の技術開発と会社経営のスタイルをホストコンピュータメーカーは取り込むことが無く、組織としては旧態依然のままだからである。
しかしシリコンバレー的ベンチャーも殆どが消えていったように、変化の激しい世界では会社という組織を発展させて安定化させるということが難しいのだといえるだろう。そこで仕事をするには会社の経営に情熱を燃やすよりは、今まで無いものを作り出すことに情熱を燃やす人の方が中心にならざるを得ず、会社としては常にリスクの高い運営をすることになる。だから会社を大きくするよりは、会社自体はコア業務に特化して、そういった会社の連携で大きな仕事ができるように変化してきているのだろう。技術の流れはすでにそうなっていて、総合的なパッケージソフトはMicrosoftOffice以降は作られなくなり、利用者はパッケージソフトを買う習慣もなくなりつつあり、どうやってソフトで商売するのかという時代になっている。
この30年でプログラマの自由は高まったともいえて、個人でシェアウェアで稼いでいる人もいる。それも中国や東ヨーロッパのものも流通するようになったので、世界市場で質の高いプログラムが競い合うようになっている。これらはもうパッケージソフトの発想ではなく、PeerToPeerとかSkypeとかGraceNoteのようなネットの中で不特定多数をつなぎ合わせるものが登場し、今のスマホ・位置情報系のアプリでもn:n型の開発はもっと増えていくだろう。これらは既存のビジネスモデルが適用できないので、会社組織が利潤を上げるために開発するソフトとは全く行き方が異なってしまった。つまりIT革命の先には、ビジネスモデルの崩壊がある。それは音楽・動画・TV・電子書籍などコンテンツ業界に影響を与えただけでなく、他の産業にも及ぼうとしている。
このように既存の会社の枠組みではないところでソフトウェアが進化しはじめることができたのは、ユビキタス環境である通信やデータセンタ・クラウドなどの巨大な設備投資をするインフラが発達してきたからだ。おそらくIT関連のビッグビジネスはそういったところにしかないだろう。そしてこのインフラは今まで安泰であった既存のビジネスをこれから壊していくかもしれない。Skypeのようなモデルにとっては、これから既存の電話会社と本格的にぶつかる時がくる。そのほかにも既存の情報サービスはクラウドによる情報共有によって全く異なるモデルに作り変えられてしまうだろう。