投稿日: Feb 02, 2015 1:39:12 AM
20年前には肥大化する紙のドキュメントにどう対処するかという課題があったのだが、2000年ころからは紙は増やさない方向に切り替わり、この数年では紙ドキュメントを積極的に減らそうという動きも出てきた。そもそもペーパーレスオフィスの概念は1980年頃からあり、そのために光ディスクとか紙面伝送の技術が発達してきたという経緯がある。今日ではそういった記録や表現のための要素技術は紙と比べるとタダみたいなコストで使えるようになったので、ペーパーレスがどのオフィスでも実現できるはずなのだが、実際はあまり表面だった動きは見られない。
すでに断片的な書類はペーパーレス化してしまった分野も多いのだが、ページ数がまとまった冊子に関しては、PDFくらいしか方策が無く、記事『電子カタログ・電子マニュアル』で書いた、電子文書のEPUB化はまだ日本のオフィスに関しては概念がほとんど浸透していない。それだけ紙の冊子は制作面から使い心地まで成熟した強みがあったのだろう。さらに今から文書システムを切り替えるのに何らかの初期投資を必要とするとなると、なかなか踏み出せないということもあるだろう。文書というのは制作システムや、制作ノウハウや、運用管理システムに隷属していたからである。
紙ドキュメントから電子ドキュメントへの移行は、単に利用者だけの問題ではなく、著者から制作・流通・ベンダーも含めた全ステークホルダの同期した努力が必要なのだが、そこがまとまらないから理論上は電子ドキュメントのメリットがいろいろいわれても導入が進まなかったと思う。例えば某所では、文書作成は一太郎を使う、というようなルールなどがそれぞれあったりすると、前後工程や外注・BPOやドキュメント管理も個別対応になって、電子ドキュメントが制作環境に縛られずに自立出来て汎用性がもてることが活かされないことになる。
それに風穴を空けたのがPDFであるし、Web文書も、EPUBもそういう文書の自立化のためのルールである。これらはドキュメントの全ステークホルダーにとっても好都合なように考えられたのに、これらへの移行を渋るところが日本には多かったので、どこか損害を被るステークホルダーは居るのだろうかといつも疑問に思う。
強いていえば、技術の転換の際には取引関係のガラガラポンが起こるので、それをなるべく先延ばししたいという心理が働いていることが、この転換を遅らせているのだろう。
しかしそれは時間の問題で、ある段階になるとスムースに転換を図れるところと、そうでないところは椅子取りゲーム状態になって、後手の人たちが振るい落とされていくことになる。日本ではライバル企業に対して挑戦的になる会社が少ないから転換の着手が遅れるが、こういった競争状態になることはあらかじめ予測できるものである。
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