投稿日: Feb 01, 2011 11:15:16 PM
デジタルメディアの可能性を考える方へ
アナログの時代でもメディアの定義は難しかったが、「形」を元に区分できた。しかしデジタルになって「形」の区分もできなくなると、何がメディアかをいうのはさらに難しい。あまり空疎なメディア論をする気はなく、逆に今日のデジタルメディアの成り立ちを考えてみる方が、メディアに関するビジネスを考えるのに役に立つだろう。デジタルメディアの根本的な要素は、データとネットワークと表示・インタフェースであり、基本はコンピュータと同じである。コンピュータは自分でインプットして自分がアウトプットを受け取るが、メディアといった時には他人がインプットしたものを自分がアウトプットするということだろう。
デジタルメディアの組み立てをうまくしている例というのが、だいたいビジネスで成功している例でもあるので、そういったビジネスを要素ごとに分解して検討してみるのが、デジタルメディアを考える上で役に立つ。具体的には電子書籍という見栄えとか使い方はいろいろなものがあっても、それらにどのような違いがあって、ビジネス上の優劣にどう結びついているかがわかる。AmazonのKindleの場合は、本を読むという裏で、タグ付テキストを3G経由で受け取っていて、専用ビューアかアプリのビューアが、利用者の設定に応じてレンダリング・表示する。専用ビューアは電子ペーパーを使っているので、充電間隔が非常に長い。
これを要素別の特徴としてみると、サーバにあるデータをリクエストに応じてオンデマンドで配信するストリーミング的な方法であることで、DRMの役目も果たしている。ダウンロードではなくクラウドでのアプリのスタイルである。タグ付テキストならどんなデバイスでもふさわしい表示ができ、リフローも可能になる。これはテキストをオブジェクト単位で送って、閲覧する段階で組版するレイトバインドであり、サーバーではページ処理しない。以上はWebのHTMLと同じで、その延長上にある技術であって、文化・言語的にも依存が少なく、ひとつのコンテンツに対していろいろなユーザインタフェースを作ることで、人の年齢・世代的にも広くアクセスが可能になるメリットを継承している。
デバイスの側では3Gなのでオンにするだけの操作でどこでもコンテンツを受け取ることができる。また端末からサーバへの上りルートがあるので、サーバにインタラクティブなアプリを置いていろいろな展開が可能になる。クラウド時代には他社のサービスとマッシュアップしていくような広がりももてる。電子ペーパーの表示は優に1週間とか充電がもつので、紙のアベイラビリティに近い利便性が備わっている。今後は加えて本のように利用者がメディアの保管・管理をしなくて済むことのメリットを感じさせるアプリも出てくるであろう。例えばいつどんなコンテンツを見たかを振り返ることができるなど。
自炊のjpg+PDFによる電子書籍も見た目にはKindleに似ていても、Kindleの要素を考えるならば、Kindleは全く異なる方向に進むであろうことは想像できる。Kindleの技術要素は誰でも理解できる必勝法ではあるが、Amazonのビジネスプランにうまく当てはまっている。製品としての結果を求めるだけではなく、将来につながる設計することが重要である。