投稿日: Jul 13, 2012 1:0:7 AM
人ヌキの電子出版はありえないと思う方へ
少し前に、「何々速報」というような2chの引用などで3面記事中心のニュースのアグリゲーターおよびコメントのサイトが、2chから勝手に投稿を使っていることの警告を受けたことがある。「何々速報」は、元ニュース + 2chのコメント +オリジナルコメント で成り立つ。サイトの魅力としては、元ニュースと2chの反応の組み合わせによる盛り上がり方に注目して、見慣れた炎上ではなく、なるべく斬新な炎上になりそうなものを拾うことにあるのだろう。
内容が3面記事ではなく、政界の裏側だったり、宗教だったり、特定分野でも似たようなサイトはある。しかし意外に日本で発達していないのは、アメリカの民主党・共和党の大統領選挙のような国政に関するニュースのアグリゲーターである。アメリカではWebのジャーナリズムとして Huffington Post や Politico のようなまじめなものが既存の新聞やTVに匹敵する内容となったために、新聞やテレビのニュースの信頼が長期低下傾向にあり、 マスメディアに信頼を置く人は半減し、少数派になったことをメディアパブ http://zen.seesaa.net/article/280403347.html が紹介している。
アメリカの場合には大統領選挙のような人々が直接国政に関わる機会があることが政治ニュースが盛り上がる主要因であるが、それはニュースのアグリゲーターの仕掛けがあるだけではなく、キュレータによる再編集とか質のよいソーシャル再編集があって成り立つのだろう。日本の新聞記者の署名が少なかったり、ニュースキャスターも個人名でtwitterを熱心にやっていない傾向があるが、アメリカのジャーナリストは個人名で社会の矢面に立つ姿勢なので、多くのフォオワーがついていて、その力が集まって結局はニュースアグリゲーターサイトの評価になっている。
日本でも paper.li や flipboard で個人がニュースアグリゲーターをすることが増えているが、現役のジャーナリストがそのような仕掛けを使うとか有料Webサイトを運営することは増えていくだろう。オリンパスの問題を世に知らしめたFACTAのようなところにどこかが投資をすれば新しいネットのジャーナリズムとして躍進する可能性もあるかもしれない。
こういった傾向は政治に限らず、アメリカでは雑誌に代わるニュースサイトとしてTechCrunch、Engadget、Business Insiderなどが活躍するようになっている。専門分野ではこういったサイトが育ったことで、逆に既存のマスメディアにニュースを提供するような逆転現象があって、ニュースサイトが次第に自立しつつある。また雑誌に等しい評価が得られるようになるとコンテンツに課金をする例もでてきている。つまりジャーナリストの自立がニュースサイトの自立につながってきたといえて、メディアを扱う人を育てずにシステムやビジネスモデルだけ真似しても、メディアとしての自立にはつながらない。
関連情報 2012年7月25日(水) 『出版のマーケティングを見直す 復刊ドットコム』