投稿日: Apr 17, 2012 12:45:22 AM
日本の再起を望む方へ
日本の家電の没落を尻目に最高潮のiPhoneやiPadに対してやっかみも多いようで、中国で生産しているFOXCONNの労働環境に問題があるなどのニュースも時々見かける。しかしApple製品の品質を作り出しているFOXCONNのレベルは、どう考えても100円ショップに並ぶ中国製品とは段違いに良く、労働環境も中国のアベレージはFOXCONNよりもはるかに悪いことは想像できる。おそらくFOXCONNは元々台湾の会社なので台湾の水準にあると思う。これはちょうど高度成長期で集団就職などをしていた日本と同じようなものだろう。中国の若者の表情は吉永小百合の青春映画のような感じだなと思ったことがある。
今日いくらFOXCONNが儲かったところで、日本でその真似をしようという会社も労働者も居ないであろう。一方で日本はモノつくりを大切にしなければならないとも言われる。日本の製造業の空洞化とか中小企業の匠が失われるとか、部分的な話はあるけれども、実際は製造業になり手が無いのも事実で、工業高校などはどう考えても日本を引っ張っていく教育をしているようには見えない。つまり国としては製造業も農業も、それらに従事している人々も捨てているのに等しいのである。
日本のモノつくりの原点を匠という閉鎖的な世界に限定してしまうのは問題で、やはり現代社会にふさわしいメンタリティ・リテラシー・価値観・職業観という基盤を考えて、それを学校教育の中でも企業経営でも推し進めるところが不足しているように思える。ヨーロッパも古い価値観に固執しているように見えてもそれが教育とか経営とも連動している点は優れていると思う。つまり日本は中途半端にヨーロッパ的にするよりも、その生態系的なところは学びつつ現代社会にあったモデルを新たに開発する必要があるだろう。
かつての日本は大量生産で儲ける工場経営が製造業を覆っていたわけだが、次第に独自開発でブランドを築こうという時代になって、そこは志半ばで折れてしまったのが今日だ。これには2つの原因があると思う。第一は国内市場の競争を過度に意識しすぎたガラパゴス開発が世界には通じなかったことで、むしろシンプルな韓国製品の方がブランドが世界に浸透してしまった。もう1つはAppleのようなファブレスに思い切って舵をとれなかったことで、中途半端に国内生産に投資して採算が取れなくなったことだ。
ただハイテクのマテリアルとか産業機器は日本が強いままで、世界に提供できていて、それがグローバル化で開花した部分である。だから日本の力を入れる点は、ファクトリよりはラボ、ラボよりはデザイン、というように今日では思われるようになっているが、それでは雇用が多くできないし経営規模も大きくできない。学校教育では、ファクトリ<ラボ<デザイン というデザインをトップに置いた方針が必要だろうが、雇用という点では、生産<流通<サポート<デザインにフィードバック、という次の商品化までうまくまわるようにビジネスを再構築すると、現状のムダをなくしてその分を雇用にまわせるかもしれない。