投稿日: Aug 15, 2012 1:14:32 AM
サブカルはあなどれないと思う方へ
むかし駅前の本屋はそれなりにエロい雑誌も取り揃えていた。今はそういった本屋が半減してエロい雑誌はどうなったのだろうか?電子書籍の影響はあるのだろうか?電子書籍に限らずあらゆる新メディアのビジネスではエロでキックオフしてきた。写真も映画もドサクサの時代があったし、近くはビデオパッケージもWebもそうであった。しかしエロはビジネスの立ち上がりは早いものの、飽和するのも早く、市場全体の中でエロが占めらるところはわずかしかなく、会社は大きくはならない。そうこうするうちに新エロメディアに負ける。エロは変わり身が思い切りよく、ブルーフィルムの伝統を保存しようという動きはなかったのである。
もし新しいメディアでエロの占める割合が1/3とか1/4もあると、そのメディアの利用者は偏りがあることになり、本物ではない。そういう意味ではまだ電子書籍は一般化したとはいえないし、英語圏のeBookも同様に初期段階である。しかし新メディアでエロ以外にも多様なジャンルのコンテンツが揃うには、社会のいろんな層がかかわって社会的な浸透が進む必要がある。出版業はそういった意味では既に社会のいろんな層とコンタクトがあるので、新しいメディアを立ち上げる際にはいろんなところからタイアップの話が持ち込まれてきた。それは1980年代の電子出版の時からあったのだが、こういった機会を出版社が活かしたことは少ない。
要するに従来の出版社は紙の本を作ることにのみミッションを感じていて、紙以外には熱心になれなかったのが過去であり、角川書店のようにメディアを超越したミッションを実践している会社の方が例外である。こういったことからくる機会損失が出版界を覆っているように思う。電子書籍がエロの次に向かうべきところに各社が共同でフォーカスすることができないからである。暗黙のうちにあるのは若者のサブカル向けなのだろうが、コミケに合わせてあるいは関連付けて共同でイベントとかキャンペーンをするようにはまだなっていない。この分野は幻冬舎がIT系の出版事業を引き継いだりまとめにかかっているが、IT系も次々と出版に食指を伸ばしてくる分野である。
日本の出版界は過去の出版物の再出版に何らかの権利を確立しようとして著作隣接権を確立したがっているが、ラノベのような今売れるものを他分野に持っていかれないように、クリエータである権利者に最大メリットをもたらすようなことに努力をすべきだ。もし出版社が自己の利益中心で権利問題に取り組んでいると、作家・クリエータが既存の出版社からスピンアウトする編集者といっしょになって、別のところで新しいデジタル出版を起こすようになるだろう。角川書店の見城氏が独立して幻冬舎を興した際に、出版社は大手印刷会社に幻冬舎の仕事を受けないように働きかけたが、印刷会社は他にもいくらでもあって幻冬舎は束縛されなかった。
エロやコミックやラノベで風穴が開きつつあるデジタル出版は、紙の出版以上に誰も棹さすことができないもので、出版の業態変化をもたらすだろう。