投稿日: Jul 08, 2011 10:37:18 PM
eBookのコストを下げたい方へ
東京ビッグサイトの国際電子出版EXPOの出展社の傾向には変化があって、デジタルパブリッシング…と呼ばれたころと打って変わってBookOnDemandが激減している。PAGEではフォトブック制作の展示もあったが、ここでは殆どない。オンデマンド印刷系のアプリはしばらくお休みの様子で、それは印刷の川上工程であるDTPからPDFに至るプロセスが揺らいできているからだろう。PDF自体はユニバーサルなフォーマットとしてはデフォルトの位置にあり、1冊を完結して電子化できるのはよいが、これらを集めて冊子体にしようとするとノンブル・目次・索引・左右ページを再編成しなければならなくなり、オンデマンド印刷のような後工程ではお手上げとなる。つまりオンデマンド印刷の活用にはオンデマンド編集が必要で、そこがDTPの時代とは異なるものとなろうとしている。
記事『eBook開国のXディを見越して』では電子出版EXPOの傾向として、オンラインで編集できる自主出版サービスが増えていると書いたが、これは従来の出版業を飛び越して電子本を流通させるような動きである。規模の小さいものはBlog出版に近い形で、規模の大きいものは企業のドキュメントシステムの出力対象を、紙媒体を第一にしないで、タブレットやスマホ向きにした形である。つまり奇しくもどちらもデジタル読書端末で見られることを想定していて、そのために制作工程ではDTPを使わなくてもいいように再編されようとしている。
この展示会の出展社のかなりの部分は印刷会社など出版制作を請け負っているサービス会社で、そこではAdobeInDesignを駆使して高品質のeBookができますというDTP能力をアピールをしているが、それは紙媒体の2次利用としてのeBookに有効なので、高品質の紙媒体が必要ないコンテンツホルダにとっては興味のないサービスである。そういうところは前述の自主出版をすることになるだろう。これらはWebやケータイ小説と同じで、従来の出版とはすれ違ったまま、読書端末とともに世の中に浸透していくだろう。金のない学生が仲間と何かパブリッシングしたい時には、DTPを経験することなく直接デジタルメディア作りにかかわる時代である。DTPの対象は減ってさらにニッチな世界に向かう。
しかし紙媒体がなくなるとか孤立するという意味ではなく、記事『ePubが象徴する出版の今後 』に書いたePubファーストになり、紙媒体の必要性が生じたときにInDesignなどにもっていくという、流れの順番の組み換えがされるであろう。紙媒体はコストがかかるが、コストに見合う品質とか何か価値があるものとして、メディアのヒエラルヒーの頂点で生き残る道がある。それは大量生産による低コスト競争の産業とは相容れないものなので、制作会社にとってはビジネスモデルが変わるので大きな問題であり岐路である。つまり脱DTPしてでも広い需要に応えられるデジタルメディアサポートをするのか、DTPの生き残りにふさわしい仕事に特化するかが迫まられているのであろう。
関連セミナー eBookに相応しい、アイデア、企画、コンテンツ、ビジネス 2011年7月22日(金)