投稿日: Dec 21, 2010 10:46:58 PM
電子書籍を難しく考えることはないと思う方へ
先般、Ebook2.0Forumの集まりで駆け足でプレゼンした中で触れたことだが、確かボイジャーは19年ほど前から活動していて、ハイパーカードのエキスパンドブック(ExpandedBook)はWebが始まる前から存在したのに、パソコンでそれが広がることはなかった。当時MacWorldなどでFD(フロッピー)でコンテンツが売られていた。荻野さんは「電子ガリ版」と読んでいたと思う。山中速人氏が社会学調査のレポートにCD-ROM化したものを使っておられたように記憶している。そこでGoogle検索してみたのだが、大学教授の研究業績に紙の本は挙がっていてもデジタルメディア作品は掲載されていないことがわかった。マルチメディアばかりやっていた人は、きっと教授にはなれないんだ。形のないものの弱さというか、そういったものをアーカイブする電子国会図書館が必要なのだろうが、何かそんな動きも聞いたことがある。
Ebook2.0Forumの方は、「電子ガリ版」はその後Webの方で実現していき、Webの中でもBlogがその役割を果たした。しかしそれから19年経って「Book」のイメージは人々の中では滅んではおらず、電子書籍という様式が話題になりだしたという話をした。そういう流れで考えると、MovableType、TypePadや、WordPressからEPUBに吐き出すツールが作られているが、Blogをオーサリングツールとして、そこから電子書籍を作るのが一番電子ガリ版に近いかと思う。Blogが自然に広まったように、自分でできる電子書籍はほっておいても広がっていくであろう。
また以前にBookOnDemandに関して、書籍流通は無視して10部くらいだけ作ることはありえるという話をした。これの狙いは国会図書館に納本するためである。そういったことを必要とする人が共同で出版社を作ってしまえば、実際にはWebや電子書籍でコンテンツが流通しているとしても、出版した証拠は残せるので、どんなデジタルメディアもBODを介して研究業績として数えてもらえることにもなるだろう。論文や研究成果の整理とか「清書」としてのBODは進んでいくだろう。雑誌を合本製本することがあるが、こういったものもBOD化されるかもしれない。
Ebook2.0Forumでは、Jコミの話もした。すでに絶版漫画マンガ作品をユーザが勝手にファイル交換がされているのに対して、そのファイルに著作者の先生方の了解を得て何枚かの広告ページを挿入して、無料で堂々とダウンロードできるようにしたものである。しかも作業の労力は「どこかのだれかの自炊」にのっかっている。作者の漫画家先生は広告収入を受け取り、利用者はあいかわらずタダである。これが1ヶ月前に公開され、この1ヶ月の間に200万を超えるダウンロードがあった。出版元との関係とか、これからいろいろ議論を生む要素は抱えているが、Jコミが提起してることというのは、「やればできることが、されていない」ということに尽きる。もしこれからJコミが問題解決できずに自滅していくならば、そうさせる出版界が自力で新たにできることは何もないだろう。