投稿日: Dec 29, 2011 5:31:27 AM
メディアビジネスの突破口を探している方へ
2011年が終わるというのに、2012年の展望というのはあまり話題にならない。それほど3.11の大震災の傷跡は深く、震災以前のさまざまな計画は変更を余儀なくされ、その計画の作り直しが進んでいないのが現状なのであろう。記事『Appleを追い越す会社は出てくるか?』では TechCrunch などのニュースに関心が薄れてしまったことや、投資はいろんな条件で風向きが変わることを書いた。今はこれから日本で何に投資がまわるのか全く見えていないのではないか。
2011年から「次世代メディアビジネスのためのWorkShop」の開催を予定していたのだが、震災によってノリの軽いベンチャーは無視されて投資はつかないだろうと思えた。モバイルのゲームなども震災前にブレークして大衆を既に巻き込んでいたからよかったものの、軽いエンタメは投資家からすると、かけだしのお笑い芸人のようなもので、ビジネスとして相手にするものではないかもしれない。震災直後は佐々木俊尚氏ほか多くの人が気分を明るくしようとしてお祭りなども止めたり慎んだりすべきではないと言っていたが、やはり先の展望を再設計しないことには本質的には盛り上がれないだろう。
しかし震災以前から経済が縮小していく日本の再設計は答えがでておらず、従って復興以外の投資の行き場がない状態であった。ずっと古くの経済成長期には各省庁が産業政策を出し、産業界は工業組合などを組織化して中小企業近代化促進法の元で技術革新・経営革新に取り組んだ。前職のJAGATはこれに合わせた情報提供をするためにあったので、私が入った頃は会員が数百社であったのがピークには1200社までになった。経済成長が終わりバブル崩壊の時には縮小するかと思ったが、IT化が進んだので印刷・出版業界はその後10年は持ちこたえた。
それは、IT化が情報加工を効率化させたので印刷・出版業界はむしろIT投資をしてリストラしなくてよかったが、安価にできる一方で作り過ぎを生んで今日の逆境の元となった。(『デジタルの落とし穴 : 安直』参照) 前世紀はデジタルメディアはPDFに象徴されるごとく紙媒体の代替手段であったのが、今世紀になってWebファースト(ボーンデジタル)になって、統計上も印刷が停滞どころか衰退産業のようになったので、IT投資しても売上を伸ばすことができない。自然とIT投資もされなくなるので、せっかく馴染んだデジタル人材が流出する傾向にある。
印刷会社は出版社の経営体質のことをどうこう言える立場ではなく、どちらも立脚点を見直さなければならない。近年はコンテンツが云々とか感性が云々ともいわれるが、それでは投資は呼び込めない。コンテンツや感性をマネタイズするスキルが投資に値するということが抜けているように思う。それは単なるデジタル化のスキルではなく、ネット上のビジネス感覚が必要で、それがグローバルになれば日本の伸び代にもなるだろう。