投稿日: Jun 11, 2014 1:5:7 AM
前職場は昔コロンボ・プランという開発途上国援助の研修生の受け入れをしていて、たまに講義をしたことがある。国際協力事業団(JICA)が窓口で、主に東南アジアの印刷会社幹部候補生が日本に来ていた。その後経営者になって、また日本とつながっている方もいる。印刷会社とはいっても官制であったり教科書出版社であったり、どちらかというと国の知的インフラに関係しているところが多く、あまり商業印刷には関係が無かった。印刷関連技術を教える目的ではあるが、そちらの方はあまり研修生の熱意が感じられず、むしろ日本の社会を見て、それぞれの国の発展の参考にするというような研修であったのかもしれない。
今また海外の研修生を受け入れようという話がいろいろあるが、今日の東南アジアの発展を見ると遅きに失する感じがする。日本でもバブルの頃に3K職場が嫌われて人が来ないので、東南アジアの若者を研修生という名目で結構大量に使ったことがあった。これは悪く言うと使い捨てで、例えばグラビア印刷工場において有機溶剤を大量に使うところに投入されるとか、研修でも何でもない実態があった。当時はそれでも働きたい中国人は多くいた。
時代は変わって、そういう人は今は中国の都市部で同じ様な仕事につくようになっているだろうから、もう日本が簡単には集められないだろう。ではカンボジアとかバングラディシュから集めようとでもいうのだろうか?
バブルの際の3K人手不足に対しては産業用ロボットの導入とか、印刷の自動化とか、技術革新で乗り切ってきた。それはいろんな面で功を奏して、今東南アジアの工業が盛んになってきて産業機器が多く輸出されるようになった。もっとも高機能材料や高度な産業機械が輸出されて安くて高性能な製品となって輸入されることで、国内の中小企業はどんどん苦しくなっているのだが…
直近の人材ニーズとしては東京オリンピック関連工事なのかもしれないが、やはりそれに対しては人手のかからない工法のようなイノベーションに取り組むことが正攻法であって、言語や文化の壁のある外国人労働者では現場からマネージメント側へのフィードバックがうまくいかないので使い捨て労働力になりがちだが、それでは日本のノウハウの積み重ねにはなりにくいだろう。むしろ研修生を受け入れるなら、日本と世界で共通の目標に取り組んでいるところがよい。
満員通勤電車の車両を増やすよりも時差通勤を奨励した方がいいように、いろいろな過不足を物量の投入で何とかしようとするのをやめて、省資源・省エネルギーで成り立つ代替案を考えることが、これから世界のどこでも役立つことである。世界各国が資源を奪い合っていたのでは人間に未来はない。そういった知恵を発展途上国の人が日本での研修で身に着けるようになるのがいいのではないかと思う。それには日本人自身が省資源・省エネルギーのイノべーションをもっと行わうよう奨励すべきだ。