投稿日: Jan 20, 2012 12:0:16 AM
新たな世界が拓けると思う方へ
Appleが噂されていた教育分野のツールやアプリとして、iBooks 2、iBooks Author、iTunes Uを発表した。これらはいずれも無料でダウンロードできる。iOS用の電子書籍購読アプリがiBooks 2、iPad向けの電子書籍作成アプリがiBooks Author、大学の授業などを受講できるアプリがiTunes Uで、これらを教科書の再発明と言ったが、受講まで変えるのなら授業の再発明になるかもしれない。まだ機能的な特徴は説明されていないので、直接どの程度のインパクトになるのかわからないのだが、再発明ほどの機能を根付かせるのは長い道のりであろう。
こういった一連の戦略はAmazonのKindleとりわけKindleFireによるマルチメディアを強く意識したもののように思われる。KindleFireが大ブレイクする前にiPadのアドバンテージをはっきりさせておこうということだろう。しかし出版物企画制作のプロセスとして考えると、KindleもiPadも単なる表示とユーザインタフェースに過ぎず、作業の場所やツールは既存の紙用のものを使わざるを得ない。iBooks Authorは一見するとAdobeのソフトやエディタもなしで出版物が作れるような印象を与えるのかもしれないが、出版作業のメインはiBooks Authorがあろうが無かろうが大きな変化は無いだろう。
今日ではPDFは校正指示に使われる。PDFは完成されたイメージを正確に伝えるものとして考えられたわけだが、ほぼ完成段階での校正が出版品質を保つ上では非常に重要だから、PDFは校正コミュニケーションの機能を追加した。ところがePubにおいてはほぼ完成状態から修正作業に戻るところというのはまだ未熟なところがある。InDesignに戻って修正してePubを吐き出してターゲットデバイスで確認するというのは、カンマとピリオドが間違っているのを見つけて直すというような段階では修正すべき箇所を探すのも大変でイライラするものである。
もともと校正者がInDesignを扱うことはできないからInCopyという共同編集環境を作ろうとしていたAdobeだが、それは未完のままになっている。だからクラウドに向かう今日の解決すべき課題としては、表示とユーザインタフェース以上に出版プロセスの合理化がある。これを何とかしないと既存の紙の出版用データを先に完成させないと電子書籍ができないことになってしまう。iTunes U用のデモを見る限りは紙本に動画などを嵌めた物のようだが、それはまだ教科書の再発明ではない。教科書の再発明は教室ごとのオンデマンドとかバリアブルなことが容易にできるほど、企画編集に柔軟性が持たせられるものかもしれないし、それにはApple以外の多くのアプリ開発が必要になるだろう。