投稿日: Jul 13, 2011 10:44:18 PM
従来のITベンダーからすばらしいサービスが出ないと思う方へ
毎日TechCrunch上にはさまざまなビジネスモデルの「発明」や売買が掲載されている。これはTV番組でやっている「あると便利グッズ」と似ている。言い換えると「無くても困らない」ものである場合が多い。twitterやfacebookはそういったものとはどこかが違った。これらは写真共有ならもっと特化したサービスがあるように、特化とは反対の汎用性というか、いわば中華鍋のような何にでも使えるものである。かつてのSonyPlazaやちょっと前の100均ショップのように、「あると便利グッズ」が人々をワクワクさせる時期というのは限られていて、ワクワク感だけで企業経営を続けていくことはできない。しかし起業とかベンチャーはそういった期待感で面白がられる面が強い。
ベンチャー企業にとっては起業後の第2ステップとして、期待感よりも実際の効用で評価されるフェーズに入る。これをあらかじめ考えて仕込んでおいて、スタート時は別のインパクトあるモデルに見せるようなのが賢いやり方なのだろう。twitterやfacebookにはそういうものを感じる。しかし実際にサービス開始する前には、どんな点がユニークで高く評価してもらえるかは予めわからず、スタート後に遮二無二努力して有効なサービスに持ち込む場合が多いのではないだろうか。その段階で最初の起業アイディアとは異なったものとなって、第2の起業のようになってしまう場合もあり、社会との関係では一皮剥けたものとなる。
大手ITベンダーの場合は起業のような実ビジネスの運用までする気は無く、特許のとれそうなアイディアを追いかけているように思える。昨年岡崎市の図書館のシステムが問題になったことがあるが、大手がいったんシステムを作ってしまうと、ユーザに対しては「仕様がそうなっているから、それで使え」、という態度になりがちだ。これは、頭で考えてよさそうなアイディアのレベルにとどまってしまい、洋服に体を合わせろ、靴に足を合わせろ、といっているのと同じで、システムを活きものとして利用者とともに変化し続けるものとは考えていないことである。特許においては具体的な効用よりも、純粋にユニークなアイディアを競うものであろうが、これはモノつくりには通用してもコンピュータはあらゆるビジネスや生活者の前面にあるものとなった今では、利用のしやすさとか日常の諸問題における有効性ということが問われるようになっている。大手はそこには踏み込めないので、今日では話題になるようなサービスは作れなくなっているのではないか。
つまり今では大手は信頼性とかセキュリティということをシステムの特徴の第一に挙げることがあるが、裏を返せば社会にもまれて一皮剥ける努力はしないのでユーザビリティが特徴ではなくなっているともいえる。そこに対してベンチャー企業がさまざまなサービスを提案しているのだろう。かつては先にシステムありきで、その制約の中でしかサービス開発ができなかったのが、ネットの普及によって分散的にいろいろなサービスが独立的に開発することが可能になって、「コンピュータの当たり前」が崩壊しだしたのである。
しかし大手がきめ細かなサービスを提供するようにはならないだろう。クラウドの時代になっても、わが社のデータセンタは金融業のセキュリティレベル、といったセールスポイントしかないのでは、海外や新興のデータセンタにビジネス機会を譲っているようなものだ。