投稿日: Feb 27, 2013 1:30:46 AM
ビジネス化よりも前にするべき事があると思う方へ
昔のアナログレコードの珍しい楽曲をLPに編集して発売する際に、元のアーチストにロイヤルティを支払うのだが、その相場はLP1枚あたり何十円だった。これは1曲5円であり、売値の2-5%くらいだろう。アナログ媒体は複製のための製造費や売れ残りのリスクがかかるので、それがないネット配信のデジタルメディアでは売値が半減以下になり、従ってロイヤリティの比率は数~十数%は保障できるはずだ。これは過去のアーカイブコンテンツの利用の場合だから、新規に音楽を出す場合の配分は、だいたい記事『もし電子書籍が音楽配信を追うなら…』にあるように、もっとクリエータの取り分が多く、それは制作費をクリエータが負担しているからである。
今日CDが売れないとは言っても、それは大ヒットするものがないことを意味し、元からヒットなぞないクラシックやジャズ、その他特定分野の音楽はCDとしてコンスタントに出ていると思う。またナツメロ的なものもボックスセットとして企画されてコンスタントに売れるものがある。だからヒット狙いの音楽産業とは別のビジネスは存在して、アーチストはそれだけでは喰えないにしても、ひとつの収入源としてアーカイブが利活用されることを考えるべきである。
これは漫画でも小説でもエッセイのような短文、詩、俳句でも同じなのだが、こういったコンテンツのアーカイブや管理をするところが、音楽産業のようには整ってはいない。これらを突然JASRACのように管理することは不可能だろうが、分野ごとに何らかのデータベース整備とか検索可能にするリポジトリを作るべき段階にきている。しかし最初から収益を求めてライセンス授受や課金・支払いの仕組みを作ってもうまく機能しないかもしれない。まずすべきことはアーカイブを作る際には、とりあえずどこを窓口にライセンス交渉をすべきかという情報は入れておくことだ。
一般に作品を発表した出版社がライセンスの窓口になるのだろうが、実際には出版社が過去作品のライセンスビジネスをする気がないので、今はまだ窓口は封じられているといってもよい。こういったライセンスの交渉権は本来は作者にあるのを、出版社が代行する建前なのだろうが、事実として出版社が動かないならば、作者が交渉先として全面に出てくる場合もあるだろう。そうなることを出版社は望んではいないのだろうが、出版社がアーカイブの管理をしていない状態では、出版社ヌキにファンやマニアの有志によるボランティアが作者と手を組んでアーカイブを進めていくことになるだろう。
その先に作者がそういった管理を委託するところがアーカイブ作品のビジネス化をするようになるだろう。