投稿日: May 15, 2013 12:50:12 AM
誰のための自主出版かと思う方へ
自主出版が容易になって、それがビジネスとしてどうかと考える人もいるが、そもそもビジネスとは次元の異なるものなので、全てのことはうっちゃっておけばよいと思う。それは従来の同好会や同人の文集のようなものも、また企業の作成するドキュメントも同様だし、個人のBlogをアーカイブするのもすべて含まれるからである。自主出版の一部は評価された後に商業出版としてデビューするが、別にデビューを目的としない自主出版が主である。商業出版のネタ探しとして自主出版を考えると膨大な数を相手にしなければならないわけで、決して楽な仕事ではない。現状の出版社でも原稿の持ち込みの相手をしている余裕はないように、メジャーとは異なる世界ができつつあるといえる。
YouTubeに何かのやり方を解説している映像は非常に多くあがっていて、ほぼ大抵のことは検索可能になっている。そしてそれらの動画を数分に編集してアップしている人たちは、編集前の素材を作品の何十倍・何百倍も持っているので、DVDで詳細編をちゃんと用意していている場合もある。それらの配布や販売は、一部の有料・無料コンテンツの配信サイトとか、物品のオークションの「その他」として行われたりしている。一部は電子書籍に紛れ込んでいるのかもしれないが、どうも出版とは必ずしも相性はよくはない。
それは本屋で紙の本以外を売るのが苦手であったことと似ている。ヴィレッジバンガードのような本屋もあるが、それは出版界からみると例外で、過去にも書店ルートで何かを売ろうとしてもあまり成功はしなかった。これは流通機構の問題というよりも売り場の雰囲気とか能力の問題である。何年も前から雑誌にとんでもないフロクをつけることが行われていて、無理やり製本して流通させていたが、それが発展して既存の出版社以外の物や本以外の物販を拡大することにもならない。おそらく店舗設計の能力とか適性が関係しているのだろう。
今電子書籍の流通は市民権を得てきたといえるが、そこに雑多な自主出版が流れ込むかどうかは、以上のような既存の出版との相性のような課題があるので、難しいかもしれない。だから無理やり自主出版との連携を考えるよりはうっちゃっておくとか、全く別の系列で何かを試みる方がいいだろう。つまり出版流通とは異なるところからネット版ヴィレッジバンガードのようなものがそのうち成長してくることになろう。それはコミケや虎の穴のような対象を狙ったものもあれば、ニコニコ云々の発展系もありえるし、MAKE(Maker Faire/Maker Conference)のような手作りの世界から興るものもあるだろう。現状のコミケの「その他」はそのようなもので構成されているのだから。
何らかの新しいコミュニティのムーブメントがあるところで、新しいメディアが出版印刷の分野を迂回して、自主流通できる自主出版というものになろうとしているのではないか。