投稿日: Feb 17, 2011 11:8:17 PM
CDは滅びるのかと思う方へ
中島聡氏のBlog「デジタルでは補いきれないCDの売り上げの急速な落ち込み」に紹介されていた近年の音楽産業の推移が話題を呼んでいる。これはデジタル音楽配信がCDの売り上げを喰っているという以上にもっと大幅にCDの売り上げが下がり続けていることを示しているからだ。これは実感として納得できるところが多い。私はそもそもそれほど多くCDは買わなかったが、通販でポツポツ買っていて気づくのは近年の値崩れであり、海外のものは半額になっているから、それだけで売り上げ半減はあり得る。これもいろんな理由があって、リマスターして再発売されることが多いので、古いCDが投売りされていることもあろう。 だから5ドルで20曲入っていたりすると、デジタル音楽配信よりお得なのである。
今から10年ほど前に、ドイツから出たR&BGoesRock'n'RollというBOXSETを買ったが、これはCD30枚組で600曲あり、ダラダラ聞いていたので全容をつかむのに2年くらいかかったように思う。10年前はCDセールスのピークであって、大型企画ものがいろいろ出ていた。CDが登場してからその時点までで音楽の売り上げは3倍になったのである。そこからほぼ鏡に映したように上り坂が下り坂に変わって、今ではCD立ち上げ時程度の売り上げに戻ってしまった。こうしてみるとCDバブルの崩壊が起こったようである。根本的にはCD点数が増えすぎてしまって、店ではさばききれなくなってしまったのであろう。日本の書籍と似た話だ。
消費者サイドではCDの「積んどく化」は進んだだろう。CDが安くなった分、曲が重複していても気楽に買えるようになった。これはLP時代にはなかったことで、人々のCDの所有量は過去にないほどになったに違いない。言い方を変えると未消化な音楽のストックが社会的に増えてしまった。この段階ではCDそのものに売れるきっかけを見出すのは難しく、AKB48の握手券ではないが、楽曲の外にある文脈に紐づいてCDも添えて出荷されるとか、本とかDVDにCDが付属するとかの段階を経て、その先の既存音楽のビジネスは映像配信にセットなども含めて成り立つようなものかもしれない。
しかし新しい音楽を手がける人は増える傾向にある。そういった人にはコヤシとしての豊富なCDは役立つだろう。ところが新たなヒット曲はCDとは連動せずにオンラインでも相当出るようになった。短期間にマーケッティングしてグローバルヒットを狙う音楽プロダクションなどは媒体は何でもいいだろうから、音楽配信でも映像配信でも組み合わせて売ることになるだろう。それではCDの役目はないのだろうか? 音楽のもうひとつの行き方はマイペースの音楽活動であって、ライブなどが中心で、新曲はネット配信し、過去のアーカイブはCDというような組み合わせになるだろう。アーカイブは時間を超えたものなので、ローカルヒットが次第にグローバルに浸透する可能性というか機会として重要であろう。
ここ10何年のCDオーバーストックは古本の世界にも近いものであり、事実BookOffでは古本も古CDも並んで売られている。紙の書籍もアーカイブとしての役目はなくならないだろう。(アーカイブは紙かクラウドか、というテーマは別途予定)