投稿日: Sep 17, 2010 11:1:1 PM
守りのための投資という矛盾を悩む方へ
改正薬事法によって対面販売でなければ多くの薬が売れないようになって、ネットを含む通販業者が打撃を受けたことがあった。通販の是非が十分に議論される前に、薬害被害者の団体がネット販売に反対するなどで押し切られた感があった。出版の再販制度の弊害が取り沙汰された時に、小出版社の団体が維持のために出版流通対策協議会を作ったこともあった。これらは規制緩和による市場の活性化に向けた動きの横車として、立場の弱い人が担ぎ出された代理戦争のようなものだった。文芸家や音楽家を表に出してネットやデジタルでのコンテンツ流通に横車を押すこともしばしばある。これらは場違いな方策であり、ねじれた考え方だ。
音楽に関しては、ラジカセでFMのエアチェック録音してウォークマンで聞くということが行われていた。この時はラジカセは売れ、ウォークマンも売れ、しかもレコードも売れていた。ところがデジタル時代になると私的複製にも神経が尖った態度になり、プロテクトとか補償金が取り沙汰される。しかしこういうウォークマン時代とは打って変わった態度になったのは、音楽産業が負のスパイラルに入っていったからだろう。今電子書籍・eBookについてアメリカのプラットフォームを避けたい意図で三省合同云々の動きがあったが、税金を捨てるようなプロジェクトはやるべきではないという意見も多い。以前からGoogle依存を脱するために国産検索エンジン開発とか、マイクロソフトに対抗して官庁で一太郎を使うとか、TRON、第5世代コンピュータなどなど、国がガラパゴス推進をして税金を無駄にしたことは多かった。
これらは最初から勝ち目はないことはわかっていながら、黒船が入ることに対して国内勢が時間稼ぎをするものであったが、結果的にはその時間の猶予の間に黒船側が日本の市場にフィットする努力ができて、フォントもユニコードも国内にあったものよりも良くなってしまったように、黒船の評価を上げたのだった。ここでわかることは、黒船の方がバリューチェーン的な全体の流れを踏まえた事業のグランドプランがしっかりしているのに対して、日本勢は自社事業の最適化という小さい発想になりがちなことと、猶予期間の間にどれだけの仕事ができるかと言う点でも実際には日本勢が追いつかないことだ。要するに日本勢は知恵やマネジメントで負けているのに、国内の政治力で横車を押すことに執心であり、結果的に滅亡に向かう負の団結をしてしまう。
負の団結では、良い知恵は出ないし、性格は悪くなるし、味方は減っていくし、尊敬されないし、若い人には反面教師になり、次世代が育たない。前述のような過去の経緯も若い人がフェアに比較すると黒船の方が優れていると判断されてしまうことを考えると、負のスパイラルの中での延命策はいかに空しいことか。それでもこういったことが続く日本だから、少なくともネット&デジタルで事業を考えている人は、こういった負のトラップにはまらないように、いつも「伸びるメディア事業とは何か」という意識も持っていなければならないだろう。このBlogとは別に、POSTMEDIA.JPというサイトを中心に、これからのメディア事業を考える方々の情報交換を行っていこうと思う。