投稿日: Jul 04, 2011 10:21:52 PM
オープンなePub書店を望む方へ
出版社が必ずしもコンテンツの権利をもっているわけではないが、権利者から預かって運用するという代理業務を行っているので、コンテンツを管理してマルチに使う課題をもっているし、そうしている会社もある。今回『コンテンツのデジタル化でビジネス活性化』セミナーを行って出版社の反応もみてみたが、正直いって積極的に勉強したいという意向はみられなかった。機会があれば勉強会のようなことをしたいが、コンテンツ管理から出版の変革が始まるようには思えなかった。電子出版EXPOの出展状況を見ても、これだけデジタルメディアが盛んになったにもかかわらず、コンテンツ管理やDAM、DRM、データ加工などの出品がかえって減っているほどで、出版社の関心は表現の方に比重がある傾向は変わらない。
前述のセミナーでは、デジタルコンテンツを扱うのに、無理の無い方法で、時代の流れに沿っていけて、将来成長する、というコンセプトでテーマ設定を行ったのだが、やはりePub関連の話題が出てきた。アンテナハウスはWikiのようなネット上の共同編集を行ってPDFやePubファイルを生成するサービスとか、オープンエンドのWord→ePubやiPad向けマルチリンガルeBook紹介など、InDesignを経由しないePubの話があったは、結局DTPを介してのePubを作ってもそれで完全ではなく、やはりePubのなんらかのツールが必要になるから、ePubだけを見ると工数は多くなってしまう。DTPよりもePubの方が簡便であることを記事『ePubが象徴する出版の今後 』に書いたが、DTPを経由している限りそうはならない。
電子書籍が紙の出版よりもコストがかからないということで、出版・編集側が直接コントロールできることになって、いろいろなコンテンツが日の目を見て出版が活性化されるというのが成長であって、過去の本を低コストに再版するだけでは成長は望めない。インターネットが始まった時点では紙媒体のコンテンツをWebに転載していたが、21世紀に入ってWebファーストになったように、書籍も紙のコンテンツの2次利用の時代から、紙に先立ってePubで世に出るePubファーストになるだろう。別にフォーマットはePubでなければならない理由はないが、表示デバイスとかメディアが決まっていないならePubしか選択肢はなくなる。またネット上での共同編集という点でもHTML慣れしている人はePubがよいだろう。
以上は大体見えてきた傾向であるが、見えていないのはAppStoreやKindleのような世界的流通に関して、オープンなプラットフォームがないことで、これだけ検索やECが発達しているのにAppleやAmazon以外にコンテンツ流通への参入が活発に見えないのが不思議である。その理由としては、従来のECではなくソーシャルネットワークと連動した何らかの新しい仕組みを画策している最中だからかもしれない。もしfacebookと直結したeBook書店ができたならば、AppleやAmazonにとっても大きな脅威になるだろうし、出版にとっても大きな変革の時代に入るだろう。
関連セミナー eBookに相応しい、アイデア、企画、コンテンツ、ビジネス 2011年7月22日(金)