投稿日: May 07, 2014 12:36:26 AM
一見すると金があるようだが…
日本の人口が逆ピラミッドになって、懐に余裕のある層は高齢者であって、その人口に占める割合も高いという特殊な状況があることは、日本のマーケティングを狂わす一つの要因である。一般的には新しいビジネスやサービスは若者に受け入れられ、若者がそれを受け継いで発展させていくということで、新規分野の充実が図られる。例えばマイコンブーム以降のパソコンもそうであって、パソコン文化を創り出したのは当時のコンピュータの専門家ではなく、高校生・大学生・アマチュアなど専門教育を受けていないところから盛り上がっていった。
だから若者が担いで盛り上げるようなタネがあることがイノベーションの前提になる。通信の規制緩和はパソコン通信とかインターネットを発展させた。そして今のネット利用が経済としてみても無視できない要素になったのである。しかし経済的な観点からすると、日本はネジレがある。確かに若者は新しいものを受け入れてくれるが、逆ピラミッドなので人口に占める割合は少ないし、カネをもっていないがために、タダで色々なものが使えるネットにへばりついているのだから、若者相手のネットビジネスは難しかった(日本では)。
しかし中高年でITには若干ビハインドであった層にもインターネットが浸透してくることによって、楽天・ヤフオク・ジャパネットたかた、そして電子書籍も遅ればせながらそうであるかもしれないが、2000年代中ごろから市場を拡大してきた。とくにジャパネットたかたはデジタル家電やデジタルアプライアンスを中高年が使いだす機会を提供したかもしれないし、それらの参入でネット通販もシニア化が進んだように思える。
ところがジャパネットたかたは2010年をピークに売り上げが急速に下降し始めた。これは残念なことに中高年の特性をあらわしているように思う。若者の場合はデジカメでもPCでもスマホでも2-3年経つと一世代古いものに思えて、まだ使えていても買い換えようとするが、中高年は買い替えのサイクルがもっとうんと長いように思う。つまり商品が一巡するほどゆきわたれば、それ以上は回転しないのである。
実際にメーカーに対して古い機種に関する問い合わせが増えているのかどうかは確認しては居ないが、Q&Aサイトなどでは何とか頑張って使い続けようとする姿がうかがえ、メーカーも中高年には売るんじゃなかったと後悔しているのではないかと思うこともある。
中高年に貯蓄があるとはいっても、それは消費財を買うためにあるのではなく、たいていは老後の不安から取りのけてある金であって、年金や福祉の不安を軽減させないことには市場に放出されないだろう。それは個々のメーカーや流通業者ができることではない。
新しい製品が若者に先に受け入れられるという鉄則は揺るがないし、そこにしか将来の市場を切り開く要素はない。だから若者向けのビジネスこそ日本国内市場に留まらず、世界を相手にしなければならないのではないだろうか。