投稿日: Nov 22, 2013 12:31:42 AM
リアルな衝撃を伝える
50年前、私は中学生でメディアとしてはテレビが面白かった時代だった。当時は映画の人がテレビを嫌っていて、テレビは自前でタレントを育てるとか、作家を見つけるようなことをしていたのが、かえって面白い成果が出るようになった。ハナハジメとクレージーキャッツがテレビと映画のメディアミックスで人気者になるとか、Beatlesがテレビ報道によって世界的なブームになるようなことが起こり出した。それ以前は映画が娯楽メディアの王者で喜劇の人気者シリーズとかエルビスプレスリーの映画化などがあったのが、テレビの普及で人気者が変わりつつあった。
しかしその時代ではテレビのコンテンツはまだ十分にはなく、劇場中継とかコンサート、スポーツなどのサイマルものが重要コンテンツであった。ナマ番組が多かったが、学識者有名人だけでなく、いろいろな分野の人が紹介されて人気者になることがあった。料理の先生とか指圧の先生とか個性で売った人も多く輩出された。タレントよりも素人の方がリアルに何かと伝えられるという感じがあった。
まだビデオテープレコーダーが発達していなかったので、それ以外は一旦映画に撮ったものをテレビで流すことが多かった。新日本紀行のようなドキュメンタリーも、知らない世界がいっぱい紹介されて面白かった。これはフィルムであったために今日でも残っていてアーカイブになっている。
こういう状態だから、海外のものもフィルムになったドラマなどしか紹介されなかった。それらがアーカイブになって今でも見られているのかどうかはわからない。あまり見てみたいという気もしない。アメリカのCATVでは古いドラマが繰り返し放映されてはいたが日本でお目にかかることはほとんどない。
それよりも当時中学生の私がワクワクしていたのが衛星中継が始まるということであった。相手国がアメリカなので、衛星中継の時間帯は日本の深夜になって、通常はテレビ放送は終わっている時間帯だったのだが、頑張って起きていてテレビをつけた。
すると突然にオープンカーでパレードするケネディ大統領が銃弾で倒れる映像が写された。その日にこの事件が起こったので、衛星中継用に用意されたプログラムは取り止めになって、ニュースに差し替えられたのである。この映像は災害のニュースのように、何度も繰り返し流された。アメリカのニュースが日本でみられるということを超えて、日本に戦勝した国の大統領が狙撃されるというのを見たのは何とも複雑な気持ちであった。特にケネディは人気があった。日本人は国のリーダーが若々しいのをうらやましく思っていた矢先だった。
社会人になってから、テキサス州ダラスの狙撃現場を訪れた。そこはモニュメントになっているとともに、ずっと燃え続ける灯火が揺らいでいた。未来永劫に消さないようになっているのだろう。そこは犯人がいたとされるビルからはかなりの距離があり、銃弾が大統領の頭に命中するのが不思議なくらいだった。
放送でも通信でもどちらでもよいのだが、映像メディアにおいてはサイマルのノンフィクションというのがもっともインパクトの強いものであることは今日も、今後も変わらないだろう。別の言い方をすると、今のテレビ局がリアルな世界への取材力を劣化させてしまうと、通信分野の映像メディアが別のところから発達し、テレビはコンテンツのレンタルやオンデマンド配信に負けてしまうようになると思う。