投稿日: Nov 04, 2010 12:19:57 AM
ソーシャルへの関心は高いが取り組みにくいと思う方へ
cop10で生物多様性を叫んでいる一方で、CDシングルは嵐とAKB48に集中していて、とても大衆音楽多様性には見えない。しかし現実に人々が日々楽しんでいる音楽が嵐やAKB48が圧倒的に多いかというと、そんなことはなく、あくまでCDシングル発売を分母にした場合に限られる。そこに音楽愛好と音楽産業の乖離があるように思うだろう。今日の音楽産業は音楽多様性などは考えていなくて、マーケティングスキルで新人新曲のマネタイズをしている。コンテンツは当座の売り上げが達成できるレベルであればよいということだろう。松阪牛は成牛にさらに餌を与えて霜降りにするが、与える餌と肉の目方のバランスを考えると成牛になった時点で解体した方が効率がいいのと似ている。こだわりとか円熟の領域にはあまり踏み込まないのが経営効率がいいのであろう。
マーケティングスキルは時として皮相的なビジネスを産み出す。今ソーシャルメディアが話題なのでマーケッターの世界にも異常な熱気があることが、AdTechへの集客でも感じられる。私の知っている人に関する限り、マーケティングは不変なスキルであって技術革新に左右されるものではないので、その時代々々の技術を取り込んでいけばよいと考える人が多い。果たしてそうだろうか? マスメディア広告が下がる中でインターネット広告に力を入れて乗り換えていけばよいというものだろうか?
ソーシャルメディアを今までのマスメディアの延長でOneOfThemと考えるのは大きな勘違いだ。SNSであれtwitterであれ編集長とか論説委員とか情報の統制をする人がいないものなので、基本的には階層構造のないフラットなコミュニケーションである。そこにマーケティングの統制的な考え方を持ち込んでも齟齬は免れられない。冒頭の例ではCDシングルの集中販売はやはりマスメディアが火付け役で、そのエコーのようにソーシャルメディアが働くのだろうが、今月のヒット曲以外の大多数の音楽はマスメディアは関係なく(如何に音楽番組が減ってしまったことか)、こだわりとか円熟こそが肝の愛好家の世界がそれぞれあってSNSに依存するようになった。YouTubeは相当重視されるようになり、今後の焦点はネットでのLiveメディアに次第にシフトしていくだろう。
一方ソーシャルテクノロジーであればソーシャルグラフとか解析・マッチングなど判りやすいテーマになり、技術革新によって発達することが理解できる。しかしほぼ統計と言い換えてもよいようなソーシャルテクノロジーとマーケティングはなかなか結びつきにくいと思う。なぜならマーケッターは従来のマーケティング手法をどう活用するかという視点で見ているからで、フラットコミュニケーション時代におけるマーケッティングの再定義をすることがないと、技術と歩調を合わせることが出来ないことに気がついていない。21世紀に入って多くのビジネスで考え方の切り替えが必要になり、それを乗り越えて成功しているモデルもいくつもある。しかしメディア業界はまだ過去の自分を変えることに抵抗が強い業界に見える。