投稿日: Oct 06, 2010 11:5:52 PM
日本の官公向SIerのどこかが間違っていると思う方へ
国勢調査をインターネットで回答してみて、このプログラミングのお勉強程度のインタフェースでも紙の回答用紙よりもよっぽど機能的で、他の行政調査がこうなっていない不思議をあらためて感じた。国勢調査といい、エコポイントといい、バックはセールスフォースが数週間で用意したということで、日本の官公向けシステム屋では間に合わないのも不思議である。こんな調子なら時間的にも価格的にも利用勝手という面でもSaaS/クラウドにますます傾斜してしまうだろう。コンピュータがどこに存在しようともプログラムそのものは似たり寄ったりだが、プログラムを作ることよりも、システムの立ち上げとか使うことのサービス価値をもっと考えないと、これからの情報処理のサービスはないな、ということだ。
思い返せばコンピュータを実用的に使い出したのはアンケート調査のためで、Apple2に外部記憶としてカセットテープを使っていた頃だった。Basicの勉強もかねて始めたもので、その後ハードディスクの時代になって、次第に業務用のシステムも社内で内製化するようになった。あるとき標準化関係の調査で、アンケートの企画や事務処理だけでなく、情報処理も受注してしまったことがあった。何万件かのデータをRDBで処理するもので、NECの9801で行って200万円ほど請求したと思うが、後でそれ以前は某大手ソフト会社に出していて1000万円以上かかっていたことを知った。それに対して会議の事務局が直接調査票企画からプログラム、入力手配の作業をするので、処理を受注するソフト会社の営業とかSEの人員がかからないのである。
今日的に考えれば、調査企画の段階からアンケートのプロトタイプを動かして、処理側とグループとして情報共有し、会議が終わる時点でプログラムも完成するという手がとれる。つまり最短の工期は可能である。国勢調査では入力画面が韓国語、中国語、英語、ポルトガル語も選択できて、また国勢調査に関するコラム記事とかいろいろな情報のあるサイトに仕上がっている。従来の官公向けサイトを見ると情報処理の費用の売上げ維持だけを考えていて、使う人の利便性など設計していないな、と思えるものもあるが、業者としても処理費用だけではなく、もっと利用者とのインタフェースに仕事の価値を置くようにして、回答率や情報精度などの向上を成果として認めてもらうビジネスを考えたらどうかと思う。
自分が調査の処理に直接かかわっていた時には、アンケート用紙よりも先にプログラムがあるようにして、入力画面を加工して紙の調査票にしていた。アンケートの回収が始まると同時に入力をすると、回答件数がどれくらいあると結果が安定するのかも判る。分母をどうするかで一概にはいえないが、以前の経験では適切な対象であると300件くらいで安定した。また最低でどれくらいあるとよいかと言う点では50-100件くらいで、100パーセントという考え(100人に聞くと…など、異常値は除いて)はそれなりに尤もなことだと判った。それが今インターネット調査となると(インターネットという母集団の偏りはあることは承知で)、回答日時や回答にかかる時間、答えやすい問いと答え難いもの、など調査そのものも分析できるようになり、この手の調査自身がこなれたものになろう。
今回の国勢調査は従来の紙ベースの調査を置き換えたものであるが、これからはクラウドを前提として、もっと簡単で有意義な調査をするような考えになるだろう。