投稿日: Aug 09, 2013 1:32:18 AM
サービスは玉虫色
普通のビジネスをする会社は、あるサービスを提供したくて、それに必要なプロセスを考える。Amazonも最初はネットで本を売るためにいろいろな工夫をして、独自の効率的なプロセスを見出したのだろう。しかしそこから先がAmazonの特異なところで、見出したプロセスの競争力をベースに次の新しいビジネスの段階に入っていくことである。それは本と同様にCD・DVDを扱うことから始まって、クラウドのサービスまで、多様なサービス展開に及んだ。
自社の強みを活かした横展開を考えることはよくあることだが、Amazonには3つの特徴がある。あるいは次の3つの要素をバランスよく行うともいえる。それは ①実績ベース、②既存ビジネスとのシナジー効果、③次段階への踏み台 となる。
①実績ベース
Amazonで成功していることをウリに、外部にサービス提供のビジネスをする。
②既存ビジネスとのシナジー効果、
本とDVDはオススメを串刺しでできたように、商品間相関でプロモーションできることを重視。
③次段階への踏み台
オンラインコンテンツ流通のためにKindeを販売したように、どんな領域が新たに広がるのかを考えている。
新聞のビジネスを構成する、広告+購読+取材+編集・制作、という要素がことごとく変わってしまったことを記事『Amazonによる出版プロセスの破壊(1)』で書いた。AmazonのベゾスCEOがワシントン・ポストを個人で買ったということは、即Amazonのビジネスと関係付けるのではなく、前述の横展開における、①実績+②シナジー+③踏み台 をベゾス自身が考えるためであろうと思う。
従来のベゾスの考え方は、特定サービスにこだわるものではなく、むしろAmazonはプロセスの合理化を得意技としていて、その得意技を増やす方向に進んでいる。つまりサプライチェーン、ロジスティック、ドロップシッピング、トランザクション、ビッグデータによるプロモーション、データセンタなどで、これらのテクノロジーやノウハウによって可能はサービスで既存ビジネスとのシナジー効果のあるものはなんでもする。まずプロセスを変えてサービスは後から決まる。
このことを新聞のビジネスに当てはめると、まずは 広告+購読+取材+編集・制作 というセットを壊して、それぞれの中にAmazonの得意なものを関連付け、おそらく今まで手をあまりつけていなかった取材や広告などコンテンツ調達に関するところに、次段階への踏み台となる新たなプロジェクトを始め、それがうまくいきそうなら、メディアビジネスを対象にした新しいビジネス領域を作るのではないかと思う。
つまり新聞発行の下部構造を作り替えるのではないかということである。これがECにおけるコスト最適化のような効用をもたらすなら、メディア業が生き延びたり、また新たな参入者が立ち上がりやすくなる。今のHuffPostはライターへの利益配分の構造が出来ていないだろうし、SNS系の投稿は情報の質のチェックができていないので、そのままでは発展しない。
Amazonが書籍販売、POD、Kindle、KDP、というようにコンテンツ・クリエータ側にビジネス領域を広げてきた。その先にはやはりメディアビジネスに着手するのが妥当なのだが、それは既存のメディア業を助けるものとは限らず、編集やライター、クリエータというレベルからの関係再構築があるのではないか。