投稿日: Aug 05, 2010 11:28:53 PM
クロスメディアは今後どこに向かうかと思う方へ
クロスメディアという言葉は2-3年前に電通が使い出して、広告や販促の世界ではよく使われるようになった。元はAppleがDTP以外に音や映像などいろいろなオーサリングを可能にした1990年代中ごろから出てきた。その当時はMacさえあればメディアを横断的に制作できるというような意味で使われた。その後いろいろな文脈で使われるような変遷があったので振り返ってみたい。
Web first, Born digital
2000年頃から情報の発生時点において直接デジタルで行うことが、アナログを上回るようになっていった。手紙よりもmailであるのは当然として、2002-3年からプロの写真家の間でもデジタルカメラの利用が増えた。殆どの情報加工はデジタルが先になるという逆転が起こったので、それまでは印刷用のデータを再加工してWebに上げるなどしていたのが、WebはWebで先に進むようになった。ここではこの2つの媒体とか制作プロセスをどうするのかという意味でクロスメディアが問題になった。Appleの提示したオーサリング環境のクロス化に近い問題意識であったが、やはりMacの世界とWindowsの世界の融合は進まなかった。業際的なテーマでもある。
One source, DAM, CRM
Microsoft Office 2003 で独自の定義ながら XML Schema がサポートされ、Office 2007 ではデフォルトの保存方式がXMLとなったように、00年代前半ではデータをXMLで管理することで、コストをかけずに多様な利用にすぐ使えるようにしようという潮流ができて、それぞれの業界内での情報交換に何々MLというのが無数に考えられた。それらのかなりは現在でも情報交換フォーマットの標準になっている。しかしたいていのアプリケーションソフトウェアのネイティブファイルフォーマットをXMLにするとか、Webの世界もHTMLからXMLに移行させようというのは、それほど進まなかった。RSSのようにXMLがコモンになったものもあるが、WebをセマンティックWebにするというのは限られたアプリケーションでしか起こらなかった。しかしデータの標準化の必要性は常識となり、今日の諸eBookのシステム設計上では考え方は引き継がれている。
Cross promotion
商業目的のメディア利用は、マスメディア、印刷物、Web、メルマガ、ケータイなどいろいろなものが同時並行的に行われる。かつてはメディアごとに縦割りの世界があったので、使うメディアが増えるごとにコストも手間もかかってしまう。商業用はXML利用のような構造化が難しいので、一元的なシステムにできないが、販促プロジェクトレベルでコンテンツから制作までの合理的で統合的なコントロールをしようという、組み合わせ利用の技術としてクロスメディアプロモーションが今日も模索されている。しかしそのような手法が独立してあるわけではなく、そもそも今まで縦割りで行っていたプロモーションを統合的に考えるというところに重要な点があるので技術的課題ではない。それに取り組んでいるのがまさしく今である。
eMerchandising
販促に様々なメディアが組み合わされることは今日では当たり前のこととなって、次にネットの双方向性を活かした展開ということでソーシャル何々が大きなテーマになっている。これも今は販促目的で努力をしているが、マーケティングして商品を作った後でのコミュニケーションには限りがある。ネットの双方向性は人々が自分の欲しいものを探す意欲やそれを提供するサービスを拡大していくだろう。今までオンデマンド何々とか、必要なものを探してくるプロキュアメントとか、投票をもとに製品を作るようなeMarchandisingの過程にメディアが絡んでくるだろう。言い換えると消費者と対話型で商品を作っていくためのメディア利用の兆候が、例えば複雑なローン申し込みのガイドなどにみられる。メディアはあらゆるビジネスの顧客インタフェースになっていくだろう。