投稿日: Nov 30, 2011 1:6:40 AM
電子書籍は誰も儲かっていないと思う方へ
清水メディア戦略研究所のIT Biz Social Net - BUSINESS HINT! 119回が29日(火)に行われた。そこで、ブック・アサヒ・コム BOOK asahi.com のプレゼンが行われた。今まで朝日新聞の書評サイトということであまり気にしなかったものだが、その成り立ちや背景をお聞きすると、大変大きな可能性を持っているように感じた。朝日新聞の記事は1988年以降デジタルで残っていて、そこから書評2万点ほどがこのサイトに上がっている。それ以外に書協や主要電子書籍サイトの取り扱い書籍のデータを横断的に検索でき、本のナビゲータとなるサイトである。
これらをベースにソーシャルなコンテンツとして、マイ本棚機能があり、「みんなの本棚」「おすすめの本棚」「みんなのレビュー」「ブックマランキング」という形で情報共有するサイトである。マイ本棚の利用は会員登録が必要だが、これは朝日新聞社の決済・認証サービス「Jpass」利用者だけでなく、twitterやfacebookのアカウントを持っていれば、そのIDで登録できる。当然ながらこのサイトのコンテンツから、tweetとかfacebook「いいね」ができ、またここからAmazonはじめ主要オンライン書店に飛んで購入できる。
こういう単なる本の紹介ではなく、出版・流通・読者をつなぐ外部のさまざまなサービスのハブ機能については、2006年頃に勉強会をして話し合ったことがあった。まず重要なのは書籍の名寄せで、ブック・アサヒ・コムでも紙と電子の本の同定に大変な投入をしている。それはISBNではデジタルコンテンツを含めた管理ができないからで、特に電子書籍は同じ作者の同じタイトルでも多くの派生コンテンツがあって、どのようにひもづけたらよいか悩ましい。厳密に考えると使いづらいものになるので、曖昧な検索操作でもいろいろひっかかる緩い関連付けにならざるを得ない。これは以前考えていたものもブック・アサヒ・コムも同じである。
ブック・アサヒ・コムはすでに紙の書籍100万点、デジタル20万点を管理しているが、このデータを活用したビジネスはこれからのようだ。今後本格的に電子書籍がブレイクした折にはアフィリエイトでも相当大きな金額が期待できるが、今のオンライン書店の流通量では開発・運用コストは賄えるのだろうかと思ってしまう。おそらくグレースノートのさまざまなサービスを念頭に置いているのだろうが、言語の壁があるのでグローバルなサービスまでには発展できない点が残念だ。むしろ国内のステークホルダのニーズを洗い出して、プラットホーム化するのがいいように思える。
例えば、出版側が企画段階から使う仕組みとして、 ソーシャル性を活かしたマーケティング用の統計提供とか、またiTuneのように出版の段階で自分で登録してもらう仕組みを作って運用コストを下げるとか、そのために出版社向けのMyPage機能を付けるとか、出版社が販促をやりやすい仕組みなど、出版社の自立を助けることが、プラットホーム化で可能になるだろう。ブック・アサヒ・コムはハブに徹して、そのまわりにいろんなソリューションを付け足していけるような道が考えられる。長くサービスを続けるためにも、あまり朝日新聞自身がシステムを抱え込まないのがよいと思う。