投稿日: Jul 19, 2013 1:23:43 AM
ソーシャルメディアは民主主義的か?
ソーシャルメディアが明るい未来作りに役立つかもしれないが、百家争鳴になるとか衆愚政治になることを警戒する人もいる。それは「権力 vs オープン」というような図式とは限らず、権力組織自身の中にも言えることである。記事『平均点的な日本の弱さ』では中国がチャイナ7とかチャイナ9というエリートに権力を集中させているのが将来どうなるかを気にして書いたのだが、実はすべての組織に通じる話であると思う。
アメリカの大統領選挙では、オバマさんはソーシャルメディアの後押しで大統領になれた。しかし超保守派もティーパーティのようなソーシャルなやり方でオバマに反撃し、ソーシャルメディアはどちらか一方に味方するものではないことがわかった。さらにティーパーティの進撃は共和党内部での力関係を変えてしまった。共和党支持の保守派の人が穏健なあるいはリベラルなリーダーを攻撃するようなことが増えているように思える。
その典型が、昨年の大統領選挙で歴代大統領と親交のあった福音派のビリーグラハム師がモルモン教のロムニー候補を支援した云々ということで窮地に立たされた「事件」で、2013年10月に日本にビリーグラハム師を呼んで開催を予定していたミッションnow大会(仮称)が中止となった。実際のところビリーグラハム師がモルモン教を認めたものではないようで、その経緯は こちら に詳しい。ちなみにミッションnow大会はないものの、代りにレーナ・マリアさんなどを呼んでのイベントが行われる予定である。
この件は、経緯を読むとビリー・グラハム伝道協会(BGEA)に不満を持った人が暴走して、かなり濡れ衣というか話に尾ひれをつけてしまったようにとれる。いわゆる炎上の一種だが、共和党支持者が非共和党の福音派の人にも訴えている点が特徴である。共和党の内ゲバが外部を巻き込んで起こったようなものだが、この背景にはモルモン教と知ってロムニー候補を擁立した共和党の人と、保守で原理主義的な共和党支持者とが相容れない状態になってきたことがあるのだろう。
従来のガバナンスの方法では、組織内で信頼を得たリーダーが執行するのがあたり前だったが、今はそういった秩序が必ず保障はされないで、ゲリラ的な炎上がどの組織でも起こりやすいことになる。しかしもし既得権などで押さえつけられていて下の声が上に届かないからゲリラ的なコミュニケーションを使うのなら、ソーシャルメディアは明るい未来作りに役立つのだが、ビリーグラハム師のようなキリスト教の世界でも、人の足を引っ張るのに炎上が使われることも起こり、これは組織の民主的な運営の妨げにもなる。民主的なプロセスで進んできたものもクーデターのようにひっくり返されてしまうからである。