投稿日: Jun 14, 2014 1:10:47 AM
権威づけは反科学
私は1950-70年代のアナログレコードを一部屋抱えていて、10数年前から整理にかかっているので、必然的にアナログのオーディオ機器が必要になり、変更したり補充しながらデジタルへの変換作業をしている。もう何万曲かをキャプチャーし、1割くらいはデジタルでリマスタリングを終えた。しかしそれらのオーディオ機器そのものが昔のものであり、部品や針も昔のものを補充しなければならないので、ネットでいろいろ調べまわる必要がある。そこは有難い時代になったもので、たいていのどんな部品でも見つけて買うことができる。主にeBayのオークションを使っているのだが、ヤフオクも使うことがある。
アナログレコードが廃れて、一時は日本のレコード針屋さんも倒産かという時代があった。ところがよくしたもので、日本のオーディオは世界中に売られていたがために、世界中に針のストックもあって、たいていのものは逆輸入で途絶えることなく手に入った。またフォノカートリッジメーカー純正ではない互換針もたくさんあって、むしろ昔よりも安くカートリッジや針が揃えられるようになっている。レコード針屋さんもネット時代に復活して、英語サイトのネット直販で頑張っているところもある。ネットをうまく使うとアナログレコードのようなロングテール化した世界でもそこそこ成り立って続いていくように思える。
ネットにはシニアオーディオマニアのブログ類も豊富で、そこが古いオーディオ情報の交換に役立つ。が、しかし、役立つ情報の100倍か1000倍か怪しい情報や嘘の情報もある。何をもって怪しい・怪しくないかを判断するかというのも微妙ではあるが、実際に職業としてオーディオ関連の開発に従事していた人のサイトは決して多くはないが、やはり信頼できると思える内容は多くある。
それ以外の99%以上は主観と伝言ゲームのようなブログ記事で、全く価値はない。まず書いてあることのデータを示すことができていない。音が違うとは、物理的に何がどう違うのかを表現できていない。これは聴覚上の個人差というものがあって、しかも実は耳で聞くよりも訓練された大脳で聞いているという人間の性質上から半分は仕方ないことである。
しかしアナログよりもデジタルの方が解像度が上がった時代だから、以前よりも多くのことがデータで表せるようになっている。例えば同じレコードで針を変えたら波形がどのように変わったとかは視覚化ができる時代なのである。レコードの溝も針先も簡単な顕微鏡写真が今は簡単に取れるのである。そういうことに手を出さないオーディオマニアは科学を避けて通っている人たちだと思う。
今日の純デジタルオーディオになると、針とかカートリッジ、アームなどはもとより、配線材の違いによる音が良いとか悪いとかという要素は何もなくなる。これはデジタルテレビがカメラとディスプレイが直結するようになったのと同じで、オーディオもマイクとスピーカーしか変動要因はない。つまり音は波形というデータを基準に語るべきだが、実際には高額で立派な機材を持っていることがオーディオの権威であるようなイメージが強く残っているのだろう。