投稿日: Sep 08, 2010 11:2:28 PM
日本のITで大成功者は出ないのかと思う方へ
21世紀になると印刷はどうなるかということを、10年前くらいからいろいろな機会に調査していて、おそらく半分くらいに落ち着くときがくるだろうと思った。印刷物は予備を考慮して多めに作るのが、小ロットづつ作るように変わって在庫を圧縮するとか、廃棄の問題から多ページ数の印刷物は減るなど、ロスを減らすだけで半減するからだ。ここには情報誌のように紙からネットへ移行するような現象は織り込んでいる。一般には紙からネットへの移行はもっといろんな局面で起こると考えられているが、ネットのメディアが次々出てきても、それらはお互いに食い合って総量ではそんなに伸びるとは考えなかった。ガラケーの次にスマートフォンが増えるとしても足し合わせるわけにはいかず、結局は人口から逆算してメディアの配分を考えると、情報に対してアクティブではない人はそれなりにいるので、マスメディアなどは半減程度に落ち着くのではないかということになる。
要するに既存メディアは半減するものの、変化は無く少人数で効率的にまわすものになり、ネットのメディアは勢いがあって新しいものが次々出てくるものの消えるものも多いという新陳代謝の激しいところに向かっている。だから既存メディアは仕事が半減しても経営が成り立つように、何にもまして課題はスリム化とか縮小均衡で、これに手をつけられないところは破綻する。しかし広告や出版は外注化という点でのスリム化はしたものの、本体事業の人々はメタボのままであることが大きなリスクである。またスリム化を進める中では投資は行いにくいので、地デジでもマルチメディア放送でも既存メディアの側から大胆な手を打つことは難しいであろう。デジタルTV受像機にインターネットの口はついていても、ほとんどサービスが進んでいないことからも想像がつく。既存メディアとネットメディアはあまりにも対照的なので、ホールディングスの形になっている角川などは対応できても、従来メディアのひとつの会社が両方を手がけることは困難である。
新しいメディアはリスクが高いので、少人数での創意工夫や短期で状況判断ができる特殊な組織が必要で、長らく変化の少ない組織に慣れてきた日本のサラリーマンには任せにくい。メディアビジネスに限らず日本の産業は一旦は脱サラリーマン化しないと黒船にもアジア勢にも対抗できない。国としてはサラリーマン半減、役人半減というのも課題になり、教育から職業観まで見直すことが進むだろう。この点では、子供を、良い大学、良い会社へ進ませたいという親心が大きなブレーキである。
新しいメディアを作るには、やはりまだ白紙に近い若い人の能力をうまく引き出すことが重要なのと、彼らが新たに立ち上げるビジネスは旧来のマスメディア的なものを目標にするのではなく、中程度の成功で落ち着くようにしないと、リスクは減らせられない。マスマーケティングで大ヒットを狙うとか排他的なビジネスをするのが大成功なのではなく、いろいろな分野にフィットしたサービスを提供するニッチ的なビジネスが多くある方が、社会としては豊かである。これはソーシャルメディアの発達とシンクロして進むもので、その中から結果的に大成功も出てくることもあろう。パソコンでパッケージソフトを販売していたのが、フリーウェア・シェアウェア的なものになり、今日アプリのダウンロードになってきたような流れの中で、コンテンツビジネスやメディアビジネスも考え直さなければならない。