投稿日: Jul 14, 2010 11:20:44 PM
ベンチャー経営者は孤独だと思う方へ
デジタルメディアはビジネスにおいてはもはや広報宣伝ツールではなく、メインビジネスの効率化に必須となっ たことを、『メディアとビジネスの関係が変わる』で書いた。これに対応するためには、単にIT投資や最新動向の真似ではなく、事業当事者の意識やリテラシーの変革が必要になり、まずはそのためのリーダーが居なくてはならない。これは経営者自身であることが望ましいが、役員や経営企画のような人も同じである。現状では日本の経営層はメディアやコミュニケーションを抽象的に考えて戦略化することは苦手で、外部からとった人や若い人に委ねてしまいがちであるが、ジャパンアズナンバーワンの時代から今日までの経緯を振り返れば明白なように、情報戦略を他人任せでうまくいった例は無い。
従来から情報の入手や加工、またそれによるコミュニケーションを生業としてきた会社が、こういったノウハウを企業戦略に活かせればよいはずだが、現実の日本では紺屋の白袴の場合が多い。例えば新聞社は2000年問題のときにホストコンピュータの更新をするとか、ネットワークやデータベースを駆使した取材・編集というのも、アメリカには相当差をつけられた。Web新聞などで頑張ったアメリカの新聞でさえ、最近は大変な状況(広告依存が日本よりも高すぎたこともあり)であり、今後5~10年で大決断ができるかどうかの瀬戸際にある。こうなったのも経営層がデジタルメディアと向き合うことが十分にできなかったからであろう。
もう日本のIT分野には過去の資産で暮らしていける領域はなくなりつつあり、裸一貫のベンチャーのつもりで、アメリカに胸を借りつつ、今までとは異なる日本のITにおける強みを発揮できる何かに挑戦せざるをえないところまできている。つまり事業者個々人の課題としてだけではなく、少し大きな目標を共有する必要も出てきたと思う。具体的にはどのような人がこの課題を真剣に取り組むべきかを考えると、既存のメディアビジネス事業者だけでなく、そこを利用してビジネスしているところ、メディアビジネス事業者にシステムや業務サポートを行っているところ、また新たなメディアビジネスのモデルを開発しているところ、その自分の開発するモデルで新たなビジネスを立ち上げようとしているところである。
例えば次のようなところのリーダーが考えられる。
・既存のメディアビジネス事業者としては、すでに出版・印刷、広告・販促、学習・教育、通販・EC、などのビジネスモデルを確立しているところが、今後5~10年に向けてどのように事業をリデザインすべきか考えている方。
・また事業のリデザインは、関連した他領域への移行や拡張が伴う。例えば代理店に外注していたものを自社で直接コントロールしたいとか、直販を行いなどで、メディアの扱いを変えようとしている方。
・メディアビジネス事業者にシステムや業務サポートを行っているところは、既存の顧客に対して今後5~10年先を見越した新たな時代に向けての提案をしようと考えている方。
・メディアに関して既存のものよりも有効で魅力的な新しいビジネスモデルを創出し、新たな事業参入者を招き込んで新領域を産み出そうと考えている方。
・いわゆるベンチャー事業者として、レガシーなメディアビジネスに対抗できるモデルを編み出し、自らがデジタルメディアを活かしたビジネスを手がけているところで、今後5~10年を乗り越えるのに必要なことを身に着けようと考える方。
単なる人材育成や、上から下への情報提供では経営者の孤立感は解消されない。こういった方々がビジョンを語り合ったり、交流しながら自分の事業計画を仕上げていくコミュニティが必要だろう。