投稿日: May 12, 2012 12:56:15 AM
意外なところからソリューションが来ると思う方へ
今のデジタルでの出版の原型は20年ほど前のハイパーカードにあり、まだWebができる前からボイジャーがエキスパンデッド・ブックとして出していたことを以前に書いたことがある。これはさらに10数年さかのぼるパソコンやデータベースサービスやテッド・ネルソンのハイパーテキストがベースとなっている。ITの世界は常時変化をしているようではあるが、人が文字を読むコンテンツという点では10年とか20年の節目があったことがわかる。PDFというのもエキスパンデッド・ブックと同じ頃である。
では今日はどのような段階で、次にどんな節目が待っているのだろうか。EPUBはビッグトレンドなのだろうか?むしろEPUBの背景にあるHTML5がひとつの鍵になると思われる。たいていの情報は電子ドキュメントとして提供可能に進んできた中で、まだ何が足りないのかを考えると、紙媒体以上のなじみをどのように持たせるのかに尽きる。それはこの10年の電子ペーパーもWebフォントも、また日本の組版問題も、高解像液晶も、みんなそういった文脈で改良が重ねられている。実はiOS・OSXのベースになったNeXTはディスプレイPostScriptを採用した最初のOSで、その頃から紙と同じ品位をデジタルでも再現したいということは考えられていた。
今となってはスマートデバイスの能力はPDFをレンダリングするには十分で、独自のオーサリングシステムなど考えなくてもタブレットの画面寸法に合わせてPDFを作ればなじみのあり見ばえのする「紙面」はできる。逆に言うとPDFのリッチコンテンツを作ろうとするとDTPを必要とする点がPDFの弱点となっている。しかしHTML5でCSSの時代になると電算写植のバッチ処理にかなり近いことをリアルタイムで実現できるので、JISの日本語組版もCSS3で実現できるように考えられた。だからWebで組版を含めてオーサリングしてPDFに落とすことも容易になるだろう。当然HTML5のままで使うほうが多いだろうが。
しかしまだ解決していなのは日本語のフォントである。技術的な仕掛けとしてはドキュメントにエンベッドすればよいので、アルファベットの世界では問題ないのだが、2バイトフォントの場合はどのようにフォント提供がされるのがよいのかがまだはっきりしない。ドキュメント作成者がフォントセットを買い取って自由にエンベッドするのは、文字盤を装備した写植会社のようなモデルなので、一部の会社しかできない。ドキュメントの性質上、専業者に作ってもらっても手元で校正とか再編集したい場合にはどうなるのか、また配布された文書を切り貼りする時にはどうなるのかという課題がある。
これはフォントだけではなく写真などの素材提供サービスにもからんでくるもので、再利用というのもサービスの中で考えておかなければならない。商業出版物のようにパッケージ完結型のコンテンツはあまり問題にはならないかもしれないが、ドキュメント全体でみると、再利用可能デジタル文書というのが次のイノベーションの節目で、特に2バイト圏ではフォントの扱いに新たなソリューションを必要としているが、こんなことはネットゲーム業界に任せると簡単に解決するかも知れない。つまりコンプガチャができるビジネスモデルなら、ネットにつないで再編集している最中に必要なアイテムの提供や課金くらいは何でもないのではないかと思える。