投稿日: Jun 08, 2011 11:40:56 PM
フォーマットのePub化とともにすべきことがあると思う方へ
今年日本語縦書きが可能になるePub3.0を待ち構えている人が増えている。実際に電子書籍の制作作業をする人にとると、最終フォーマットは何でもよいので、ePubも単なるフォーマットのひとつに過ぎないが、その表層的な仕様の裏には、今後の電子書籍の発展の方向性が仕込まれている。だからePub3.0の話題を通して、あるいは何らかの電子書籍制作のトライアルを通して、出版の今後を考えるよい機会が巡ってきたのだ。
ただし現状と将来は必ずしもきれいにつながっているのではなく、現状での最適解が将来への最適の道とは限らないことは多いだろう。現状で編集・制作をするとなるとAdobeInDesignを使う場合が主で、InDesignもいろんなメディアに出力できるように機能を付け加えているが、そもそも紙の出版をベースにしてWebでも電子書籍でも制作するという順序が崩れることを想定しておかなければならない。つまり現状ではePubもInDesignから吐き出して使おうということが多いが、これは将来は逆になって、InDesignにePubを読み込んで紙の本を作るようになるだろう。
では一体今どうやってePubを作るのかという疑問が湧くだろう。すでにBlogからePubに吐き出すツールというのがあるが、件のePub3.0の縦書きなどに対応するBlogがまだ存在しないので、まずはePub3.0ツールがいろいろ開発されないと始まらない。幸い今まで組版レイアウトのアプリを開発していたところにとって、ePub3.0はサブセットのような仕様なので理解が難しいものではない。近年WebがCMS化して出番が減ったように見えた組版レイアウトのツールが再び脚光を浴びて、Webの方も縦書き対応が始まると、記事『連綿と続く縦組みの糸』で書いたようなことが起こる。ePub3.0コンバーター、ePub3.0専用エディターなどはすでにいろいろ取り組まれ始めている。
では誰がこういったツールを使って、デジタルの出版をするようになるのか?当然既存の出版社は今でもDTPから電子書籍というプロセスを使っているが、それは印刷会社へのアウトソーシングなどで行っているので、ツールが必要なのは印刷会社になる。しかし「Blog→ePub」が暗示しているのは制作のクラウド化である。つまり編集側の日常の作業をクラウドで行えば、ePubの電子書籍などはすぐ出来てしまって、それが好評ならDTPに変換・加工して紙の出版になるというプロセスが可能になる。これは今の出版の自転車操業的な多点数廉価発刊のところをePub化できるので、出版経営が健全化できるかもしれないし、出版参入への敷居が低くなって、何らかのユニークなコンテンツを持っているところが前面に出てくるようになれるだろう。
しかし大きな課題は編集者の日常の業務の中でBlogなりクラウド上のツールにデータを吸い上げたり更新する業務スタイルである。若い人はいつでも何処でもtwitterとかSNSを使うのだから、その調子で日常のデジタル編集をすることは可能だろうが、中高年で自分では意地でもデータを扱わないと決めている人は困ったものである。むしろ中高年でオタク的な編集者が率先することで出版の業態変化を起こせる時が近づいているともいえる。
関連セミナー コンテンツのデジタル化でビジネス活性化 2011年7月1日(金)