投稿日: Jun 23, 2010 10:54:13 PM
電子書籍でデジタル経営を避けられなくなる方へ
民主党の事業仕分けの中でも、eJapan関連の電子申請で、すごく経費がかかりながら利用者が少ないので、やめてしまえという指摘がいくつもあった。これは予想されたことではあるが日本国として世界に対して恥じ入らなければならないことだ。岡崎市図書館の件でもそうだが官公のシステムは十分な設計なしであったり欠陥だらけでも検収を通ってしまうことは過去からみられた。行政側に発注能力がないのに予算執行権だけはあることから起こる。またそれに便乗して甘い汁を吸おうとしているITベンダーの姿勢もどんなもんか。こういうことが官公庁でも企業でも高コスト体質を作り出しているので、日本の問題としてITを使いながら効果を出せない点を反省しよう。
ITベンダー側からするとマスメディアの会社も官公庁に次ぐおいしいお客様であったかもしれない。共通点は発注に必要な要件定義が自力でできないことである。しかしコンピュータの世界はダウンサイジングがドラスティックに起こったので、パソコン一台から活用を始めて、LAN→外部連携→ECとコンピュータを自習しながらビジネスも発展させてきた会社が多くある。それと比べると官公庁やマスメディアはなまじっか大きな予算を持っているがために、自分で考えてやってみるというパソコン時代の対応が社内で身につかなかったといえる。そんなことは小さなことだと思っていたのだろうが、実はそれが今の時代の経営には必須の要素になっている。つまり経営の中に上から下までITリテラシーが重要項目として入り込んだのである。
かつては立派な経営の指標として一等地の本社ビル、社員数や設備などが競合会社に劣らないようにといった世間体を気にしていたのでシステム導入も一流企業からと考えたかもしれないが、Amazon、Googleの時代は世間体の一流よりも社内の人のデジタルリテラシーの方が問題である。つまりどんな業種でもIT金をかけた分がリターンするように考えているわけだから、情報を扱う企業は輪をかけてデジタルのリテラシーが高くないと、経営の効率化はできないからだ。ここには2つの課題がある。まずは従来の独自の基幹システムをやめて、世の中でスタンダードな割安なシステムでダイナミックな経営管理ができるようにすることと、日常の業務プロセスも従来の属人的な方法をやめて経営管理と連携するものに取り替えることだ。これはクラウド時代にはやりやすくなっているので、それを使いこなす人間の方に焦点をあてるべきだ。
eJapanの問題は従来の手作業を残しながら電子申請をしていたようなものが駄目だったので、やはり一挙に電子申請に切り替えて例外だけを手でするような大胆さが必要だし、経費的にも2重のシステムは負い切れないだろう。また電子書籍になれば、たとえ直販ではなくてもeBusinessの仲間入りなので、業務プロセスは今のものではやっていけない。特に書店は他業界のPOSに大幅な遅れがあったわけだが、そこがAmazonなどが活躍できる場所となった。かつてAmazonは独自のシステムを組んだが、今そこで出来上がったものはフルフィルメントからクラウドまで外部へのサービスビジネスになっている。こういった要素をよく理解して、こういうITの流れの上にBPOやASPをうまく使った効率経営をすることが、デジタルコンテンツビジネスの背後に必要だろう。
デジタルパブリッシングが従来の出版と異なるのは、『離れ孤島』の経営ができなくなったことだ。デジタルに向かうにはそれ相応の内部の刷新は必須である。