投稿日: Jan 24, 2014 1:31:34 AM
通信環境は誰の責任?
記事『ツールの生産性』ではリモートデスクトップの利用のことを書いたが、できればアプリ開発メーカー自身が、自分のサイトで登録ユーザに対して古いバージョンで作ったファイルを開いたり修正したりできるクラウドサービスをやってもらいたい。つまりずっと利用者と向かい合っていくつもりで、利用者個々に過去の問題を押し付けるのではなく、その会社の利用者であってよかったと思わせるようなサービスも重要だと思う。どんな業務もクラウド化で親切なことができるようになるが、その先に企業にリターンがあるかどうかが問題なのだろう。
OCRの精度を上げるためには、フォントメーカーが協力すればよいと考えたことがある。たとえば写植時代に本蘭明朝を書籍に使ってもらったことに対して、本蘭明朝を上手に読み込むOCRを開発して、登録ユーザにはクラウドでプレーンテキストにするとか、紙の本に相当するEPUBのタグをつけてあげるとか、やったら面白そうなことはいっぱいある。このような過去の利用者には好都合なサービスを通じて、電子書籍でもまた本蘭明朝を使いたいということになるかもしれない(実際には本蘭明朝がデジタルフォントとして流通する可能性は低いし、もうその事業主体がないわけだが)。
つまり次のビジネスの機会を作り出すために過去の利用者と密な関係を築くことを、ネットなら比較的安価にできるだろうと思ったわけだ。
20数年前には職場の床のコンクリートに穴を開けてイーサネットのイエローケーブルをビルの縦にも横にも貫通させて、「さあこれから通信の時代だ」と意気込んでいた。それまで「ニューメディア研究会」というのをやっていたのだが、その頃から「通信&メディア研究会」に変えて、社内の編集・制作体制もLAN経由にしていった。
以降はネットでのコラボレーションやサービス開発が研究会の大きなテーマになった。ネット自身の発達もあって機器の入れ替えも相当行ったわけだが、ネット機器の故障というのもそれなりにあった。ルーターもHUBも壊れることはある。組織の場合はシステム部門などの要員が居て、事故のときにどうすればよいか、いつ直るかなども聞けるのだが、これがSOHOとなると手に負えない問題になってくる。
クラウドサービスの利用が日常的になって、仕事でもクラウドへの依存が高くなってしまうと、もしもの時に全くお手上げになってしまう。Gmailもそれ自身ではローカルにバックアップはできないから、別のメールに飛ばすとか、別のツールを使って保存することを利用者自身が事前に行っていなければならない自己責任の世界である。
家の無線LANルータが壊れた時にはスマホでAmazonにルータを発注して、その日のうちに届いて感謝したが、受注している仕事をノンストップで続けなければならないところではクラウドのバックアップや補完の手段も利用者の負担(オンプレミス部分で)になっていくだろう。
自己責任である以上、クラウド利用の損得は簡単には判断できないものである。