投稿日: Feb 12, 2014 1:17:57 AM
権利問題を解きほぐすか?
今のところクラウドソーシングというのは「安上がりに済ませる手段」以上のものにはなっていないように見える。でもまあクラウドファンディングが抱えている怪しさに比べると有用なものかなとも思う。コンテンツ制作に関してクラウドソーシングとかぶってくるのがパブリックドメインとかCCとかコピーレフトとかシェアなどだろう。これらは結構複雑な問題を抱えていて、商業的な利用には未解決なところがあることを覚えておかなければならない。長期的にはクラウドソーシングが従来の権利問題を解決する方向に進めるのだと思うが、特に日本の場合は判例が積み重なっていくのが非常に遅いので、クラウドソーシングの動きが鈍くなるかもしれない。
創作活動というのは、他人の作品の真似する意図や悪意が全然なかったとしても偶発的に似た作品ができてしまうことは避けられない。私は子供に図工をさせることをやっていたが、子供は何の野心もなく作るし、お互いに影響し合うこともあり、それでもそれぞれの作品には独自性があって創作といえるもので、本人達も楽しんでいて、いがみ合う結果にはならなかった。しかし出版などの仕事をしていた時には、使用許可を得たコンテンツでも別のところからいわれのないクレームが来たり、イラストや写真の契約の文言が過剰であったりで、商用においては使用範囲を制約する方向に走り、包括的な使用というのがなかなかできなかった。
以前は印刷用に使うのはOKでもWebには別途契約が必要というようなこともあったが、PDFならネット経由で見てもOKだったり、ネットにPDFをのせてはだめだったり、プリントできてはダメだったり、不特定多数はダメだが特定ならよかったり、などケースバイケースで考えなければならなかった。今ではスマホ、タブレット、電子書籍など多様な「出口」があるので、もうケースバイケースはやっていられないはずだ。しかし既存のイラストや写真の受発注の慣習ではここらの問題は解決していない。
それでは制作作業が複雑になりコストも時間もかかり、パーツとしてのコンテンツ自身の流動性も悪くなり、コンテンツでメシ食う世界にとってはマズいことだと思う。だから一つは包括契約がちゃんとできるようになることと、CCのように勝手に使える(ことが明確にされている)世界が広がることが重要だと思う。
それらに対して廉価にコンテンツを調達するクラウドソーシングの位置づけは未だ不明瞭な気がする。創作をする側からすると、ある程度の作品の「溜め」をもっているはずで、それに対応するような作品依頼なら手数をかけずに制作できるから廉価でもいいことになるのだろう。しかし原作は作家の手元に残ったままなので、別の機会にそこから派生させて別の似た作品が登場する可能性もある。それに文句を言う筋合はないのだが、不満はでるかもしれない。
でもコンテンツが安くなっていけば、利用は広がるし、作家にとっても埋もれた作品在庫のアウトレットセールのようなものだから、創作は先に進めるものかもしれない。同時に権利問題でもめることも少なくはなっていくだろう。