投稿日: Dec 19, 2010 10:50:23 PM
読書端末の進化を考える方へ
今は死語になったIT用語にワークステーションというコンピュータがあり、これを思い出したのはスマートフォンやタブレットが生産ツールには不向きなので、何と呼ぶべきかを考えていた時だ。ワークステーションはコンピュータが出来る以前からある言葉で、日本語にすると作業台のようなものだろう。だからどちらかというとプロが使うツールを動かすのがークステーションと呼ばれた。しかしCGのレンダリングにSGIが必要な時代でもなくなってしまって、操作はパソコンで行ってバックにレンダリング用のサーバがあるような使われ方になった。パソコンはマンマシンインタフェースの専用装置となり、それをつきつめるとタブレットのようになってしまう可能性もある。ただしiPadでどんな操作も出来るかといえば、まだ無理で、プロの生産性を求めるならばiPadを数台同時に使うような方法を考えなければならない。タブレットが万能ツールになるのではなく、目的ごとの細分化・多様化が進むだろう。
Kindleなどはマンマシンインタフェースの専用装置の例といえる。読書端末というのは単にパソコンの画面を切り出しただけの安いデバイスではなく、さらに読書の便宜を図る方向に進むだろう。では読書の便宜とは何だろうか? 読書のログをベースにしたソーシャルリーディングとかコンテンツの中でのリンクとか、技術的にはいろいろ検討されているが、それ以前に「何を読むか」というところのツールがある。実際には読むものの選択幅がありすぎるので、読む優先順位をどうつけるか、どう時間を有効に使って読むか、というのがツールの役割になる。下の図(既出電子読書の背景ができつつある)は左からはネットでの「発見・出会い」を通して、読書端末への購入に至るプロセスを表し、右からは自分の興味のある分野での掘り下げとか、参考文献などのリンクを辿って読書予定をたてることもある。
発見・出会い→ ←探索
おそらく個人の中では専門分野の読書と娯楽の読書は混在しているだろう。こういった読書傾向の違いや、それぞれの管理の違いも考慮し、複数の本を平行して読み進むための便利な管理ツールが必要になる。平たく言うと読書ログや優先順位の管理できるBookmark管理のようなもの、できればリマインダー機能もつけて、Kindleのようなものを使ったほうが、読了に到達しやすくなるなら、電子書籍は好循環になるだろう。1日のアキ時間を、その時々の気分に合った読みものを簡単に引き出せて、楽しく過ごすという、音楽並みの楽しみ方が最初の読書端末の目標になるのではないか。
もうひとつは読書の意欲と関係するもので、自分の「書店」を作るツールである。電子書籍が多く出版されるようになると、GoogleのAdWordsのようなお勧めがいろいろなところに出てきて、上の図でいえば、「ちら見」したり、出版リストを見たりすることが増えるだろう。こういった関心をもったものを、どこかに簡単にPoolできて後から参照できるリポジトリにするツールが出てきて不思議は無い。そこから、例えばPoolにある本に関してどこかで書評が書かれたら通知してくれるとか、自分書店を充実させることが重要に思える。これを進めると自分書店自慢のように人を自分書店に誘うようなSNSも考えられる。本を媒介に人とコミュニケーションするだけでなく、書店を媒介にコミュニケーションすることも楽しそうである。