投稿日: Jul 01, 2010 11:40:25 PM
電子書籍ブームは何時まで続くかと思う方へ
ケータイコミックやケータイ小説があることはみんな知っているのに、改めて電子書籍が話題として浮上したのは例の「黒船」騒ぎがあったからだが、そんな捩れを最初から背負っているせいか、電子書籍に関して系統だった議論はないことを、2ヶ月ほど前に「
電子書籍に関して明白なこと」で書いた。私なりに電子書籍が取り上げられる理由として考えているのは、今は「コンテンツ」が出版業界から解放されつつある状況であり、ほっておいてもプロジェクトグーテンベルグ、青空文庫、GoogleBooks などが進むことである。この流れはもう止められないので、既存の出版界がうろたえているのが電子書籍の取り組み方から見てとれる。
電子書籍とはいっても、見栄えにおいて本を騙っているだけで、仕組みとしてはデータベースであるし、売り方はECであるし、まじめに取り組もうとすると出版社や出版流通は全く内部で行うことを変えなければならない。だからビジネスモデル作りを正面から取り組みにくいだろう。しかしITの世界を牽引している企業ですら、Appleが脱PCして電話で株価を上げたとか、Googleがスマートフォンに比重を移したりなど、自分の業態を変えなければ生き残れないように、情報の世界は変わってしまったので、避けようはないのである。
情報の世界で起こっていることは、コミュニケーションの増大であるが、そのコミュニケーションの過程で多くの情報を参照する。あるいは既存のコンテンツも流通させながらコミュニケーションが行われる。つまり過去20年かかって通信インフラを築いてきた結果として、ケータイはほぼ全人口をカバーし、あと「光の道」を残すくらいまで通信インフラは充実した。冒頭のプロジェクトグーテンベルグ…が意味するのは「コンテンツ」が次の社会インフラになろうとしていることだ。国会図書館の壮大なプロジェクトも20年後に今を振り返ると「当然のことをしただけではないか」と、なぜ反対議論があったのかいぶかしげに思われるだろう。
そのように考えると、有料コンテンツも古本もこれから大変化があることになるのだが、だからといって無政府状態になると考えるのも間違っている。すぐにインフラは出来上がるものではなく時間的な余裕があるので、その間に自分のビジネスモデルは考えられるし、制作、管理、配信、マーケティングなどのスキルを身につけることはできるだろう。例えばコンテンツのインフラ化とは、義務教育に役立つものから始めるという公算がたてられるだろう。コストがかからず効果があればみんなが喜ぶからだ。しかし教育にも多様性が求められるので、オプション的な有料コンテンツは並存する。こういった社会情勢を背景に根をおろさなければ電子書籍は一時の話題に過ぎないものになってしまうだろう。