投稿日: Mar 15, 2013 1:21:56 AM
3Dプリンタにどんなチャンスがあるかと思う方へ
日本を取り戻す云々は過去の良かった時期を懐かしむ雰囲気があって、あまり建設的な気がしないが、過去の成功の中で見落としてはいけないところがメカトロニクスであると思う。これはメカニックとエレクトロニクスの造語で、従来メカニックにやっていたことをマイコン制御などで一皮剥けた高精度なモノにすることである。日本はモノ作りにおいて欧米に追いつけ追い越せということをスローガンにしていたが、高精度なモノ作りのハードルは非常に高く、機械ものは鉄の素材や加工でどうしてもヨーロッパの精度に追いつけなかった。印刷機においても同じである。しかしモノ作りの過程における部品の加工が職人技ではなくNC制御の加工機で誰でも高精度なものができるようにし、そのNC制御の技術を製品にも組み込むことで、簡単に使えて安く高性能な機械を開発してきた。
そのNC制御などは最初は工作機械に、次に産業機器に、そして次第に家電に技術移転をすることで、日本のモノ作りはあらゆる分野で安くて高性能を誇り、世界に輸出してきた。今度はアジアの製造業も日本の工作機械や産業機器を導入することで、日本は輸出が増える反面、安い最終製品を輸入せざるを得ない状態になった。しかしアジアで作っているものは、だいたいがかつては日本が作っていたものの類似品であったので、もし日本がそれらを引き離すようなオリジナルな最終製品を開発していれば、いくら類似品を作ってもそれらはアジアとか発展途上国にしか輸出できなかったはずだ。
スマホなどはアジアで生産されているが設計はアメリカなどであって、やはりアジアで新しいものが発明されることは滅多にない。しかしアメリカやヨーロッパはまだ見ぬものを考え付くことは日本より得意であって、日本は両者の中間にいるという構図は100年とかの期間では大きく変わらないだろう。そういった構造の中で冒頭で書いたように、20世紀後半に日本はメカトロニクスに焦点を合わせたために総合的に大きなメリットがあったのである。つまりメカトロニクスによって可能になる精度や機能のレベルを製品デザインに反映することをしたので、設計と言う点でも欧米を一時は上回ることができたのである。
さてメカトロニクスはもう天井に来ているのだろうか?実際のところはまだ詰めきっていないと思う。むしろメカトロニクスがあまりにもモノ作りの方に寄り過ぎてしまった感がある。だからメカトロニクスを製品開発の視点で考え直すことが必要だろうと思う。液晶ディスプレイ事業の負けは、単なる製造工場になってしまっただけで、その製造技術から新たな分野の開拓をできなかったことにある。実験的にはいろいろな試みはされたのだが、基礎研究に留まって製品アイディアには結びつかなかったのが実情だろう。これはテレビ事業という過去の分野を重視しすぎたためである。
日本で頑張った分野には材料やレーザーやインクジェットがある。話題の3Dプリンタはその延長にある。しかし、3Dプリンタの改善をすると、先にどんな製造技術や製品開発が可能になるか、ということを考えるべきで、3Dプリンタで既存のものを作ってもあまり意味は無いように思う。