投稿日: Jul 15, 2011 10:54:52 PM
制作ビジネスの限界を感じる方へ
メディアの制作ではかつて利益が出たやり方で利益が出なくなる場合が多くなっている。電子書籍でも、1ページ単価いくらxページ数、という見積もりが通っている。昔はアナログ原稿から文字入力していたものを、今ではDTPデータからテキストを取り出したり、スキャンしたものからOCRをしたり、全く制作工程が変わっていてもビジネス上は変化がなかったような業界である。つまり実際の仕事の価値に見合った値付けの再評価というのはされなかった。これは分業体制の硬直によるもので、靴に足を合わせろというような、経営への無理難題である。
今日でも1社で何もかもできないからコラボしようということになるのだが、それと過去から今に至る分業は異なり、右肩上がりの時代は同じことをずっと繰り返すことが多くなり、生産効率を高めるために最適化した結果の分業であった。写植には特殊な機器と専門オペレータ養成が必要になり、他の工程と混ぜこぜにするよりも専門特化した方がよかったのである。ところがDTPのように統合的な仕事ができるようになると、デザイナーが紙面レイアウトから組版までやってしまった方が効率的となり、デザイナと校正者のコラボをうまくすることに力を入れることになる。
細かく分業体制が出来上がると、似た工程があったり、多くの作業者を経由するので管理が複雑となり、コミュニケーションを取るのが難しくなり、最短で作業するとか、品質チェックで問題が多くなる。そこで1990年代後半にDTPを始め、DTビデオや、DT音楽などの統合的な制作が優位になった。それにもかかわらず見積もりなどが旧来のままであったために、作業の実態と料金が乖離し、それが冒頭の電子書籍にまで及んでいる。その調子で電子書籍の仕事をすると1冊何万円程度になってしまって、馬鹿馬鹿しいと思う人も出てくる。それならば見積もりの出し方を変えなければならない。つまり編集プロダクションのような契約が必要になる。
デジタル化が始まって以来、制作技術が刻々と変化すると現場の作業効率が変わるだけでなく、文字と画像が同時に扱えるようになったように、かつての分業の境界を越えたことが増えていく。それにしたがって制作サービスの範囲も変化していかなければ利益がでないものとなってしまう。結局デジタルになるとDTPも電子書籍もWebもケータイサイトも同じような制作工程になっていくので、なるべく早くネットでコラボする制作に見合った経営に移行しなければ、紙メディア出身の制作会社はジリ貧になっていくだろう。
関連セミナー eBookに相応しい、アイデア、企画、コンテンツ、ビジネス 2011年7月22日(金)