投稿日: Oct 04, 2013 2:33:40 AM
ネットの情報は完全ではない
私は前職で資格試験の問題作りやその模擬試験・通信添削などを1980年代半ばから行っていたが、2000年くらいになると、「問題を解くのに必要な情報がネット上にない」という苦情のようなものが寄せられるようになった。こちらとしては本屋に行って探せと言いたい訳だが、確かに専門書はどこの本屋にでもあるものではないし、個人で買い揃えられるものでもない。職務上必要な情報は会社が情報資産として揃えるべきという前提で、それまでは問題作りをしていたのだが、DTPの時代になると専門書よりも月刊誌の方が役に立つようになってしまって(欧米ではAdobeでもMicrosoftでも専門書は出しているのだが、日本の出版事情なのか分野として欠けて居る部分がいろいろあって)、出題方針を駅前のそこそこの本屋にいけば見つかるキーワードの範囲にしたことがあった。それならばだいたいネットで検索しても何かしらは書いてある。
しかしネットに書いてあることが十分なわけでもなければ、ネットで検索しても出てこなことが厳然として仕事には必要ということは各分野にある。記事『表層と深堀』ではネットメディアのリテラシー形成という点でfacebookとtwitterを考えたが、WikipediaもGogole検索も万能とか完全ではないのだから、そこに今後ネット上で必要なサービスを考える段階に行くだろう。電子図書館構想とか図書館の書誌データの横断検索とか、Googleによる図書館の電子化・GoogleBooksなども10数年前から話題ではあったが、そういった究極の電子化とは別に、データベースやリポジトリ活用のためのユーズウェアやサービスの開発が課題であるし、ITベンチャーの今後の活動領域になるべきところである。
QAサイトの破綻について『デジタルメディアの新陳代謝』、SPYSEEの混乱について『同姓同名と個人情報』、その他既存サービスが直面している課題というのを過去に書いてきたが、日本人はサービスを一度作ったらオワリで、自己革新をする余裕が無いように思える。誰か別人がそのサービスの至らぬところを乗り越えようとすると、一度追体験した上でということになるので時間や体力が相当必要になって、アメリカのような買収して接木していくやりかたとは戦えなくなってしまう。日本も何とかマッシュアップによるサービスの接木をマスターして、日本ならではのサービスを深められればいいのだが。
個人の趣味・嗜好の問題でもネット上にあるのはまだマスメディアの域を出ておらず、それほどロングテールが実現しているわけではない。私の聴いているレコードの大半はネット上に情報はないし、当然ダウンロード販売もされていない。それでもヨーロッパはEUのおかげで市場が広がり、超マイナーな音楽世界からの再評価があって、クラブでのDJの活躍があることを『キュレータは金になるのか?』で書いた。
マスメディアにあるものを対象にしたキュレーションを今更行ってもニュース解説にしかならない。ネットに無い(に近い)ものを再評価できるようにすることが次のテーマだろう。