投稿日: Feb 11, 2016 1:6:13 AM
1970年代以降に白人青年が黒人をスタジオに連れ込んで無理やりBlues録音をしていたというようなことを、記事『LP録音という粗製乱造』に書いた。当時はLPはどんどん出るし、一方で45回転盤も買っていて、お金がいくらあっても足りない状況で、なんとかしなければならないと悩んでいた。それでLP向けに録音された曲と45盤を聴き比べているうちに、どんどん45が面白くなってきて、ある時にLPを買うのをやめる決断をした。
そのきっかけは Junior Wells で、当時は広く流通していたDelmarkのLPが評価が高かったが、それは結構前時代的なトーンであって、そこがシカゴブルースファンには受けたのだが、もっと当時に近いものとして Chief Profile USA などのレーベルに吹き込まれたR&Bぽい45盤が楽しくて、よく考えればエンタメとしての黒人音楽の本流は45盤の方だと気付いた。
DelmarkのLPにはJunior Wells がR&Bチャートに送り込んだヒット曲は入っていなかった。それらヒット曲は Chief Profile のオーナーでプロデューサでもある Mel London によって録音されたもので、彼の仕事を追っていろいろなR&BやBluesの45盤を集めていくと、プロデューサとしてどういう音作りをしようとしていたのかが見えてくる。
これは白人青年がブルースマンに「お任せ」で録音しているのとは大きな違いで、音楽はミュージシャンと仮想のオーディエンスを結びつけるプロデューサの存在によって、弾き語り以上の盛り上がりが得られるようになるのであって、それが何十万枚という商業的な成功にも結びつく。
Mel London と 並んで尊敬するプロデューサには、もうひとりルイジアナの Jay Millerがおり、Excelloのブルースとして有名である。Jay Mller は1980年代までローカルなBluesを録音し続けていたが、今はそれらを聞く手段は無いように思う。
Mel London は黒人で、Jay Miller は白人だが、両者とも白人・黒人双方のミュージシャンを取り扱っている点もおもしろい。両者の音作りは録音された曲をきいてわかるくらい、それぞれの音に対するこだわりとか配慮がうかがえる。あまり癖が強いといつかは飽きられることにもなりかねないが、プロデュースの仕方にもクリエイティビティがあることがわかるし、独特の作品を残すにはプロデュースに何らかの強い指向がなければならないことも思う。
逆に多くのBluesを録音した白人青年たちの多くは単なるBluesレコードのファンであったので、Bluesを作り出す指向には乏しかったのだといえる。
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