投稿日: Oct 27, 2012 12:32:58 AM
eBookは本当に売れるのかと思う方へ
アメリカでも小売業全般が売り上げを落としていくことが広告の減少につながり、ひいてはメディアの経営が揺らぐ要因になっていて、これは不況とは関係なく、ネット経由での売買が増えてしまった結果である。だからeBookのようにネット上での販売をするものが伸びるのであって、紙か画面かということだけが消費者の判断ではない。見方を変えるとメディアのビジネスもネット上で売り上げが変わるように変貌しないと、もうリアルな店舗での再起は非常に困難な時代になりつつある。Amazonは日本の書籍の2割ほどを扱うようになったといわれ、その延長上にKindleを置いているのであって、ネットでの販売実績がない人が突然デジタル出版をしてAmazonにかなうわけはない。
今日ではネット上で何かを売ることはあらゆる業界が切磋琢磨している分野で、そのような競争状態のところに飛び込んでいく気概がないとeBookは売れないともいえる。通販の分野にBtoCのノウハウが溜まっているのに電子出版をしている方にネット通販の話をしてもなかなか乗ってもらえないことを記事『eBookはネット通販だと思え』で書いた。これについては従来の日本の出版業界はどちらかというと著者と組んで本つくりをするエージェントに近い役割に重心をおいていて、本を売る版元としてのマーケティングやプロモーション機能が半人前であるからだ。半人前というと聞こえが悪いが、これは版元・取次・書店という三巴の制度のせいで、三者ともに半人前でコラボしていたからだ。
この製造・流通・販売の分業は日本のいろんな分野にあり、それが流通の複雑化になって価格が高いとか必要なところにモノがまわりにくいとか、消費者から製造側へのフィードバックが緩いなど、ビジネスが円滑に回りにくい原因になっている。だからネット上に商品を並べればビジネスがうまくいくのではなく、Amazonのように朝注文したものがその日のうちに届くようなバックヤード業務の大革新があってはじめて、『ネット通販が凄い!』ということになる。この仕組みさえあれば扱う品目が何であっても商売になることをAmazonは示したともいえる。
ではもうAmazonの前にひれ伏すしかないのか? Amazonはグローバルなビジネス最適化を考えて仕組みを考えているので、たとえば日本というローカルなところでの最適化が全体の最適化に優先することはないだろう。日本の通販はそのような日本人の気質や生活に最適化させる方向で工夫をしてきたので、Amazonと真っ向勝負は避けられていると思う。新聞に通販のカタログが折り込まれることがあって、それを家電チェーンのチラシと見比べると、チラシとしての見かけは似ていても、売る姿勢の違いが読み取れる。通販はターゲットをはっきり絞っていて、それに向けて商品選択やメッセージ・特典などが考えられていて、ファンができてくるのがわかる。
Amazonは作り手側に立ったプロモーションはないわけで、Amazonで本を売ってもらうとしても、もう一方で小売の努力が積み重ねられないとファンは作れず、eBookも継続的な販売にならないだろう。