投稿日: Feb 15, 2013 1:21:41 AM
Amazonを自分の追い風に
EBook2.0Forumと共催で行ってきたOpenPublishingForumでは何度かAmazonの実像というのを採り上げたし、Amazonの戦略分析の記事などはEBook2.0Forumでも継続的に紹介されていて、だいたいAmazon論議は終息した印象がある。つまりこれから何年間はAmazonに匹敵するサービスは出てこないだろうということである。eBookのプレーヤーに限ってもダントツであるし、まだeBookビジネスでは本格化していないAppleのiBooksもGoogleもそれほど強力な対抗馬にはなりそうにないからである。さらに日本の電子書店はその指向からして問題外で、出版社もeBookではAmazonを第一に考えるようになった。
Amazonの強みは扱う商品の個別の良し悪しは関係ないことで、物流以外のオンラインのビジネスに必要な処理能力があって、それが市場を作り出すようになっている点だ。だから次第に自分が在庫しないビジネスが増えてきている。
つまりトランザクションだけでビジネスが成り立つほどになっているということだ。これは自社データセンタの能力やコストメリットがあってのビッグデータ処理なので、他の会社がデータセンタを借りてビッグデータ処理をしていたのでは、コストで勝ち目がないところまできているわけである。これに対抗できるのはeBayくらいしかないだろうが、eBayはeBookに力を入れることはないだろう。
以上はデータ処理から見た特徴だが、市場を作り出す能力というのがもう一つの特徴だ。通常の小売は仕入れに力を入れるものだが、AmazonはeBayのように出品自由な要素をもっていて、それは扱う商品の個別の良し悪しは関係しない態度といえる。つまりかつての商業とは異なってロングテールに身を置いたビジネスは売れそうなものを扱うのではないのである。日本で電子書籍を100万点用意してビジネスになるのかというと、かつて売れなかったものが突然売れ出すわけはないのだが、100万点を分母としたランキングはいろいろ可能になって、そういう可視化が次の状態を作り出す。結果的にさまざまな分野での売れ行きランキングができて、それを基に新たなマス市場は形成される。
これは従来の自然な取引の中でも長いスパンでは流行が繰り返すことがあったようなことと同じだが、それを長いスパンではなくビッグデータ処理で短期に可視化することがAmazonは可能なのである。だからロングテールを分母にした、まわりくどい市場形成が、時間や人手をかけずに行えることになる。今はネットのECの特徴はまだ口コミでヒットが出るような突発的でランダムな世界であるが、今後は流行を作り出したり、オルタナティブな価値観を作り出したり、それらの中核となるキュレータを輩出したりするようになるだろう。
いままでとらえどころのなかった分母を演算対象にしたことがビッグデータ云々であるので、そういったデータインフラの上で活躍できる人材が必要になる。そこでは統計専門家とキュレータのコラボレーションがあって、ロングテールの中からいろいろな発見がされるのだろう。だから日本人はビッグデータはAmazonに任せて、キュレータとして自分のビジネス領域に戻るのがよいはずだ。