投稿日: Dec 03, 2013 1:6:8 AM
YouTubeは伝説を作れるか?
昔、新宿西口の大久保よりのマンション内でやっている海賊ビデオ屋がいっぱいあって、欧米の音楽ライブや音楽番組のダビングをしたものを売っていた。当然ながら画質は悪いしCDに比べて音質も悪いがライブがみられるというのは貴重だった。今はそれらはYouTubeで相当見ることができるようになってしまった。
私は海賊ビデオ屋で Steve Ray Vaughan を細かくチェックしていた。ライブではCDには無いような他人のカバー曲が多く採り上げられていて、その人の音楽的嗜好がよくわかるように思える。記事『音楽様式の相互作用』で書いたように、テキサス・ルイジアナは白人も黒人と一緒に音楽が出来る要素があったといえ、そんな経験から Steve Ray Vaughanが出てきたことが感じられた。Steve Ray Vaughanは1990年に35歳で死んでしまったので作品は少なく、ぜひともライブのカバー曲も日の目をみるようになってほしい。
Steve Ray Vaughan が登場した時に、次はこの男がブレイクするだろうなと考えていたのが Hollywood Fats で、名前はハリウッドだが、ギターのスタイルは Steve以上にテキサスのバリバリで、技量的には Steve Ray Vaughanを凌駕するものももっていた。Steve Ray Vaughan がレコードデビュー前にラジオ局でライブしたものがCD化されたことがあって、その完成度に驚かされたが、Hollywood Fats も白人ばかりのバンドであるが、これがまた大変水準が高く、 ヨーロッパのミュージシャンとネイティブアメリカンとはこうも違うものかと思わされるほどの迫力があった。餅は餅屋のように、アメリカ音楽はアメリカ人、という気がする。
そのHollywood Fats もメジャーレコードデビューをする前に、1986年に32歳で死んでしまって、一般にはなかなか聴くことができないミュージシャンであった。彼らが自主制作したスタジオ録音のLPは残っていて、それらが近年CDで復活し、またその他の音源もCD化されたので、2-3枚のCDは探せば見つかる状態である。
それらに刺激をされたのが、近年はYouTubeにHollywood Fats のライブが投稿されるのは徐々に増えていて、それらをみるとHollywood Fats の音楽がどのように受け入れられていたのか片鱗がわかる。それはスタジオ録音とはかなり違ったものだった。
Steve Ray Vaughan やHollywood Fats がライブでやっていた音楽の元になる曲は、もはやレコードの世界では忘れられたものであったのに、それらを聴きに聴衆が集まって盛り上がっていたというのは奇妙な話である。つまりレコードでは継承され難い要素があったということだろう。元曲はレコードマニアならどこからか探し出して楽しんではいるわけだが、そこから聴く人が広がってはいかない。ライブでカバーされればSteve Ray Vaughan のように大きく広がっていく。さてYouTubeにHollywood Fats のライブはどれだけインパクトを与えられるのだろうか? メディアの力とリアルワールドのライブの力にはまだ大きな段差があるように感じられる。