投稿日: Sep 29, 2010 10:34:24 PM
ジャーナリストが主人公と思う方へ
今の新聞やTVが社会的な影響力を失ってしまうことは信じられないかもしれないが、そのような変化は過去30年くらいの長きにわたってのトレンドであって、必ずしもインターネットが起こしているものではない。インターネットは喉もとの刃になりつつある。マスメディアの巨大な影響力は戦争と関係していることを『印刷・メディア研究』では触れている。だから第2次大戦とその後冷戦体制のほとぼりがさめるにつれて、マスメディア離れが起こるのは、元に戻ることだともいえるし、新たな時代のジャーナリズムのあり方が課題でもある。つまりアナログメディアの位置をデジタルメディアが奪取するかどうかという単純な問題ではないのである。
アメリカはメディアの国であるなと思わされたのは、各地域ごとの新聞の充実さもあるが、新たなテクノロジーが新たなメディアを産み出し続けていることにある。印象的だったのはUSATodayとCNNの登場だった。アメリカには読売・朝日のような全国紙はなかったが、衛星通信ができたのでアメリカ各地に紙面伝送して同時に刷って配れるようにした。しかも紙面はそれ以前のデザインから脱して、「シティマガジン」(ニューヨーカーなど)のような装いにしたものだった。最初はなかなか部数は伸びなかったが、WSJ並みには行ったように思う。また衛星放送の時代になってCNNが登場した。アトランタの住宅街に事務所があって、前庭に置かれたパラボラから衛星を通じて全米にニュースが流され続けた。後にアトランタの中心部に事務所が移ったが、メディアビジネスは場所とは関係なく出来るように、その当時からフリーのジャーナリストの連携は出来ていたのである。
アメリカの新聞社もずいぶん訪問したが、記者が通勤してくるような光景は見たことがない。署名入りで記事を書く契約の記者がその後のメディアの流れを作り出していったいえる。CNNは湾岸戦争のときにイラクの内側から報道をした。これはアメリカのマスメディアの主流がユダヤ寄りであったのが、CNNは中立だからできたことである。そのしっぺ返しとして、フセイン退治の時はアメリカ政府に睨まれて封じ込まれ、御用メディアのFOXが躍進することになる。しかしジャーナリスト達はBlogで政府寄り報道に対抗した。特に9.11同時多発テロ以来、アフガン侵攻とか報道規制が強まっていく中で、ジャーナリズムとしてのBlogは大きな影響力を持つようになった。後にマスメディアは凋落傾向になったこともあって、ジャーナリストはインターネット上のニュースの方に移行していって、オバマ氏立候補の際には優秀なスタッフでトータルなメディア戦略が建てられたり、メディアの側は新聞にとって替わろうとするHuffingtonPostのようなWeb新聞が人気を得るに至った。
ネットの雑誌ではGawkerがメジャーになっているし、HuffPostともども見栄えも内容的にも読みやすいので、紙メディアと十分対抗できるものである。専門情報誌はBlog化してしまった。以上のことはデジタルメディアが読者受けとかビジネスのうまみのために考えられたものではなく、ジャーナリストが使命を全うするための方向に進んでいることである。逆の例が市民ジャーナリズムとも言うべきCGMのWeb新聞であって、こういうのはそもそも使命があるのかないのかわからないものなので2chか井戸端会議の域を出ない。やはり情報の質というのは、そこにかかわる人の質によるので、良い記者が集まって仕事の出来る環境を作るのがPublisherの役目である。残された課題はどのようにジャーナリストの働きに対して、報酬が与えられるような仕掛けを作るかであろう。