投稿日: Aug 15, 2011 10:50:58 PM
電子書籍は主人公不在と思う方へ
eBookがブレイクし始めて、アメリカの出版業界にはプラスになっていることを、EBook2 Magazine (No.47, 8/11) が報じている。ビジネス戦略として儲かる電子書籍のやり方はいくらでも考えられる。作家にとっても出版社にとっても読者にとっても経済的メリットのあることを考えるのがアメリカのeBookであった。しかしそこでは書籍流通や書店がオミットされてしまうので、従来の出版のステークホルダ全体のメリットにはなっていない。この点がこのモデルを日本に持ちこめない点で、今の紙の書籍の売り上げを維持するには書籍流通や書店の反発をくらいたくないから、中途半端な電子書籍になってしまう。つまり電子書籍で新刊を出さないなど、わざわざ魅力のないようにしていたのでは、いつまで経ってもブレイクしない。
遠回りでも紙の出版ビジネスをしっかりしたものに改善する気がないとeBookもできないということになると思う。基本は出版社が自分で販売までもできるような自立なのだろうが、それは流通への依存度を下げるという問題で、一出版社が自分の力だけで行えることには限りがあり、やはり新しい出版ビジネスを創造しようという有志が集まって、既存の出版社や出版団体とは別のビジョンを掲げて、新たなステークホルダーの関係構築もして、世界に通用する考えの新しい業態を目指すべきなのだろう。しかしかつての勢いのある日本ならばそういう武者や猛者もゴロゴロ居たのだろうが、そういった人たちがどの分野でも見えにくくなっているのが現状である。
日本でも電子書籍に何らかの可能性があるとすると、野良な出版活動がしやすくなる点であり、コミケなりニコ動なりすでに多くの若者を惹きつけている運営体が、若いクリエーターに自主出版を促したなら、具体的な動きはるかもしれない。しかし若いクリエータといえども紙の出版に憧れをもっているように思える。自分でプリントして小部数を手製本する人たちがいっぱい居るのだから、紙の出版の入り口として電子書籍を位置づけるのがよいだろう。既存のドキュメントをePubに変換するとか、ブラウザ上でePubを編集するツールとかが増えているのだが、まだePubからPDFとかDTPにして再編集という点は遅れている。
こういったコンテンツが急に大きなビジネスになったりはしないだろうが、ビジネスモデルや権利問題などに新しいものを持ち込む可能性は大きい。例えば有志が協力して外国語に翻訳するとか、電子書籍にBGMをつけるとか、遊び半分で面白いことをしようという機運がわくかもしれない。当然流通も異なったものとなる。少なくともスマホの過半数はAppleのような制約が何もないAndroidなのだから(ePubリーダーは今一歩だが)、一般人向けに情報を出すルートはできつつある。つまり従来の出版業界の構造でなくても出版はできるのだということをどこかで実証できれば、新たな出版ビジネスのビジョンも描きやすくなるだろう。
関連セミナー Androidアプリ制作の現状を学び、今後の可能性を探る 2011年8月24日(水)