投稿日: Nov 17, 2012 1:43:47 AM
もっとコラボが必要だと思う方へ
オープン・パブリッシング・フォーラムこと電子出版再構築研究会の第1期をやってみて感じたことは、日本の出版関係というのが伝統と現代のどちらにも属さない中途半端な経営をしている点でよくあることである。いつもいわれるように高度経済成長の成功モデルを引きずりすぎてタイトルの量産で自転車操業になっているのもその現われだ。伝統型産業は日本の生活者の感覚に受け入れられやすいもので、ビデオレンタルなども新しいようで江戸時代からあるモデルともいえる。古書という値付けの自由な商売も同様である。TutayaやBookOffというのは現代的経営管理をしながら伝統的な面も持ち合わせているといえる。そこが単なる思い付きのビジネスモデルと異なる点である。
すでに出版流通のかなりの部分が前述の2社やオンライン書店になっていることを考えると、すでに出版革命は小売が先行してかなり進んだところまで来ているの、提供側がそれに十分見合う新しい工夫をしていないのではないかとも思える。だから今はむしろ本を作り出して供給する側が変わらなければならないのだろう。研究会では海外の出版事情もいくつかヒヤリングした。フランクフルトブックフェアの総裁からはマルチメディア化とメディア素材の調達のところが変わるお話し、大原ケイさんからはアメリカの出版エージェンシーの立ち位置、日販さんからはアメリカの出版マーケティング・プロモーション、などが関係していて、これらは日本の実情とは異なるものの、中長期的には日本の出版にも取り入れられていく要素であろう。
今これら日本の実情と異なる話を持ち出すと、制約や「できない」というコメントがいっぱい返ってくるのだが、AmazonやTutayaやBookOffは今までできなかったことを自力で可能にしてきた会社なのである。1990年代は毎年アメリカやヨーロッパの出版社や新聞社を訪問していたのだが、その時期はちょうどホストコンピュータからのダウンサイジングの時代で、ベルテルスマン規模の会社が垂直統合的にしていたようなことを、アメリカの地方の新聞社や出版社でもネットコラボすれば似たことができるようになりつつあった。つまり垂直と水平のモデルが組み合わさりつつあって、それが今日まで発展してきているので、フランクフルトブックフェアの調達ビジネスというのにもつながっている。
ひらたく言えば、編集プロダクションと出版社と出版エージェンシーと自主出版のような4つのモデルがあると考えると、これらは若干カブる部分があるとしても、対立したり矛盾するものではなく、役割分担しつつコラボして効率的な出版ビジネスを可能にする融合モデルになると思う。つまり中小企業1社でできることには限りがあるので、そうならざるをえないのである。いいかえるとこれがオープンなパブリッシングとかオープンメディアビジネスであろう。記事『情報を資産とする出版のあり方』では、商業出版を諦めてボランティアのデジタル出版になる学術分野のことをちょっと触れたが、ボランティアな出版が再び商業出版のネタとなるようなことも興るはずで、デジタル化ネット化は大きなサイクルでの出版活動を活性化していくものだろう。
Mediverse+EBook2.0Forum 11月の研究会