投稿日: Oct 18, 2014 1:54:34 AM
CDやレコードを棚に出し入れしながら聴く代りに、聴きたい順に録音したPlaylistを作る聴き方を、記事『PlayListの意味』で書いた。それで果たして日本でこういう一人DJの習慣が根付いているのかどうか知りたいと思った。これは国民性の違いのようなものがあって、LPの時代からLPの中にどんな曲をどう入れるかとう作り方がそもそも国で異なっていた。前記事にも書いたように最初からLP録音を企画した場合はそんなことを考えなくてもいいが、いわゆるVintageな音楽であるJazzとかBluesなどの編集ものを出す場合にはかなり国民性がはっきりする。
そもそもアメリカの黒人音楽を最初に高く評価したヨーロッパ、とくにイギリスやフランスでは昔からその種のVintageアルバムが出ていたのだが、イギリスはだいたい録音順とか発売順など時系列に並べて、その時のセッション情報をも添付してLPにすることが多い。フランスはそれほど形式的に資料化してアルバムを作ることはなかったように思う。さすがイギリスは音楽においても大英博物館の国だなあと思わされた。
ところがアメリカはそういう時系列に並べたものは殆どない。LP制作もラジオのDJのような感覚で聴いた時の雰囲気を企画している。イギリスはラジオでもヒットパレードのように今週の第何位というランク付けをするが、アメリカのDJはあまりそういうことはしない。アメリカのビルボードとかキャッシュボックスという音楽業界誌はそれぞれ小売りや流通業者のために全米のマーケティング調査をして発表しているのであって、それとAMラジオの視聴者の地域特性の間にはかなりギャップがあったからだ。
つまりアメリカの方が国土が広いので音楽嗜好は土着性が全国平均よりも上回っていて、全国放送とか音楽雑誌などのメディアが流行に寄与することよりも、ローカルな嗜好にフィットさせたDJの方が人気があったようだ。だからLP編集もそのスタイルをとったのだろうし、実際にDJが編集したLPコンピレーションが発売されることもよくあった。曲の紹介でもDJの誰それが推したという表現がいまだに使われている。
アメリカはインターネットラジオ局が昔のAM局がやっていたようなことを続けているし、イベントとしてDJも続いていて、決して衰えることはない。そしてこれらが音楽情報の提供の仕方の基本であると思う。ではイギリス式の資料的編成のLPはダメかというとそういうことではなく、過去の音楽を探索する場合のアーカイブとしては重宝する。つまりVintage音楽を溜めこむタイプの人にとっては必須のものであるし、DJ自身もそういった人種なのである。イギリス盤はDJの肥やしとなる。
このように考えると、日本はまだアーカイブという点でもDJという点でも中途半端感はぬぐえない。それは洋楽の歴史の浅さなのだろう。
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